注目の現役女子大生映画監督・松本花奈による、日々雑感エッセイ「松本花奈の恋でも恋でも進まない。」が、「DVD&動画配信でーた」で好評連載中。Movie Walkerの特別企画として、松本監督が”いま気になる人”に、質問を投げかけます。

今回は連載第5回のテーマ “自分の居場所” について、昨年、長編初監督作『少女邂逅』が話題となり、松本監督とともに参加しているオムニバス映画『21世紀の女の子』が2月8日(金)に公開を控える映画監督の枝優花さんとお話をしました。

松本「枝ちゃんとは何だかんだでもう3〜4年位の付き合いになるね。出会いは中村祐太郎監督の映画『太陽を掴め』(16)の現場でお互いスタッフとして入っていて、そこで知り合って。その後、アイドルのライブ映像を撮りに一緒に台湾に行ったりもしたよね」

枝「したねえ。懐かしい」

松本「今日は改めて枝ちゃんの頭の中を覗き見出来ると良いなと思っています!」

枝「宜しくお願いします!」

■ 「毎週日曜日の夜『サザエさん』の放送が始まると、母はいつも『あーまた明日から月曜日が始まっちゃう』と嘆いていました」

松本「映画『少女邂逅』のロケ地は枝ちゃんの地元の群馬県高崎市で撮影されたんですよね。幼少期はどんな子どもだったんですか?」

枝「両親が共働きでとにかく忙しくて。父は出張ばかりだったので年に2、3回会えたら良い方で、途中で顔を忘れそうになったり(笑)なので母がほぼ女で一つで育ててくれました。でも、私は家が本当に苦手で…。母は小学校の教員をしていたのですが、職場で子どもの相手をして、家に帰ってもまだ幼かった私や妹の相手をして、とても大変だったと思います。ストレスの逃げ場がないわけで。だから毎週日曜日の夜『サザエさん』が始まると『また明日から月曜日が始まっちゃう!』って感じで追い詰められている姿をみていました。今となっては母がどれだけ大変だったのか理解出来るけど、その時は家が窮屈な場所でした。祖父母が近くにいたので幸い寂しくならずに過ごせましたが」

松本「なるほど。私も家に居場所がないと感じることが多かったので気持ちがよく分かります。幼い頃から映画やドラマはよく見ていたんですか?」

枝「そうですね。学童保育に入っていたのでそこでの友達はいたのですが、近所の子たちとは中々仲良くなれなかったんです。土日とかは学童保育がないから家の前の公園で近所の子たちはいつも通り皆で遊んでいるのですが、私はその輪に入れずにいたので、そういう時に家でビデオをよく見ていました。

学校でも友達は皆前の日に見たアニメの話をするのですが、私はその時間学童にいるので話についていけず。帰ってきたら『とっとこハム太郎』はいつも終盤の日記を読んでいるところ(笑)当時は録画機能などにも詳しくなかったので、学校の友達とも話が合わなかったです。なので、自分の好きなDVDを繰り返し見ていました。そこから、テレビの中にいる人たちが羨ましいな、と思うようになっていきました。役柄ではありますが、主人公にはちゃんと家族や友達がいたりして最後はハッピーエンドだったりして。楽しそうに思えたんです。いつしかどうやったらテレビの中にいけるか、ということを考えるようになりました」

■ 「居場所が変わったところで、お前が変わらないと何も変わんねえよ」

松本「そこからどのようにして映画の世界に?」

枝「小5か小6の時に市のワークショップで、東京から演技のレッスンの先生が来るとのことで生徒募集をしていたんです。別に役者になりたかった訳じゃないんですけど、もしかしたら何か繋がるかもしれない、何かが変わるかもしれないと思って思いきって足を踏み入れたんです。親に相談したら「そんな地に足のつかないところは駄目」と反対されたので、それまで溜めていたお年玉で自分で申し込んで通っていました」

松本「お年玉で…偉い…」

枝「レッスン内容は演技のことはもちろんですが、芸能界という世界でどう生き抜いていくか、みたいなことも教わったりしました。で、その先生に言われたことでずっと心に残っている言葉があって。『居場所が変わったところで、お前が変わらないと何も変わんねえよ』という。当時は?でしたが、いま聞くと改めてその通りだな、と感じます。例えば田舎に住んでいるから映画が撮れない、と言っている子とかに対しては、いやいやそういう人は東京に言っても映画撮れないよって言いたくなります。“どこ”で生きるかじゃなくて、“どう”生きるか、なんだよって。

自分自身に対しても昔は家にも学校にも『居場所』がなくて息苦しいなあって思っていたけれど、結局は自分次第なのかなと思うようになりました。居場所が欲しいと思産んだったらいくらでも行動すれば良い。だから『少女邂逅』の感想でミユリや紬に同情していたりするものを見るけど、私はちょっと違って。ミユリは他人依存な人間で、自分で何もしないのに他の人のことばかり気にしている。最後東京に行くと言っているけれど、東京に行ったところで本人が変わらないと何も変わらない、と思っています。終始過去の自分自身が投影されているので、登場人物に対してもっと突き放しているというか…」

■ 「自分のために頑張るってこんなに大変なんだなって」

松本「枝ちゃんは『装苑』で連載を持っていますよね。連載タイトル『主人公になれない私たちへ』という言葉に私はグサッと刺さったのですが、どういう想いが込められているのですか?」

枝「『少女邂逅』を撮ってから同世代の子たちからメッセージを頂く機会が増えたんです。そのメッセージを読んでいると、一体誰の人生の話をしているんだろう?って思うくらいみんな自分の人生に他人事だなあと感じて。自分のことなのに、誰かのせいにして安心する感じ。例えば、相談で『お母さんが反対しているから東京に行けません。本当は行きたいのに』とかいうメッセージが来るのですが、『え?』っていう。お母さんに責任転嫁しているけど、お母さんはきっとあなたが死ぬまで支えてくれないよ?と。あなたが30歳や40歳になって、少女ではなくなった時にも夢を諦めたことを誰かのせいにし続けるの?と思います。誰の人生なの?あなたの人生でしょ、と強く言いたい」

松本「きっとそういうことを聞く子たちって、もう自分の中で答えは決まっていて、でもあと一歩が踏み出せないから、誰かに背中を押して欲しいでしょうね」

枝「そう。でも、これも演技のレッスンの先生から言われた言葉ですごく心に残っているのですが、『この世界、誰も応援してくれないから』って。確かに(俳優部の場合)ファンとかは出来るかもしれないけど、でもそんなのお前の人生のきっと1パーにも満たないことで、だからお前はお前自身が応援しないといけないし、自分の全ては自分で尻を持たないといけないっていう。

私は、映画を撮って一時期は全財産が無くなったり、職が無くなったりしたんです。でも今までの保身がなくなったことで、責任も自分で持たなきゃいけないし、自分の居場所は自分で見つけなきゃいけないなって改めて感じました。確かに私が映像やめようがどうしようが誰も死なないし、何も起こらないんだから。私がやりたいからやってるんだ、という気持ちが大切」

松本「先生、名言連発ですね」

枝「(笑)。(吉野源三郎著の)『君たちはどう生きるか』を読んで、確かにここに書かれている発想って現代に必要だと思いました。私がいま考えていることとも近い要素があったりして、そういう話を装苑の方としている中でタイトルは生まれてきました」

松本「なるほど」

枝「自分のために頑張るってこんなに大変なんだなって…。誰かのために頑張るのってまだ楽じゃないですか。でもそうじゃなくて、私たちは常に自分の人生のための決断をするべきだと思うんです」

松本「クリームソーダ美味しいですね」

枝「絶品。宝石箱さんのクリームソーダは定番の6種類に加え季節限定の味も登場したりと、とにかく種類が豊富」

松本「枝ちゃんお墨付きのクリームソーダ!」

枝「(笑)」

松本「そしてそして1月16日、映画『少女邂逅』DVD発売おめでとうございます!」

枝「ありがとうございます」

松本「『少女邂逅』は色々語りたいことはあるのですが、とにかくミユリ(穂志もえか)と紬(モトーラ世里奈)の芝居に私はただただ圧巻されました…」

枝「ミユリにも紬にも私自身の要素は入っていて、というか、私をちょうど二分割した感じかなと思っています。穂志とモトーラは性格が違いすぎて、演出するのが楽しかったです。モトーラはお芝居初挑戦ということもあって、すぐに不安がるから沢山褒めていて、逆に穂志は褒めないことで『何でモトーラは褒めるのに私は褒めないの!?』と闘争心に火が点き、それが芝居に好影響を与えるので極力放置していました(笑)」

松本「可愛い。DVDは全国のTSUTAYAに置かれるんですよね」

枝「はい。もちろん一番は劇場で見て欲しい気持ちがありますが、私は地元が田舎で映画館とかも近くになかったので、幼少期はTSUTAYAさまさまでした。なので、全国で置いてくれることがすごく嬉しいですね」

●枝優花プロフィール

1994年生まれ、群馬県出身。大学時代から映画制作の現場に従事、『オーバー・フェンス』(16)特典映像の撮影&編集などを担当。『少女邂逅』が長編初監督作。

「喫茶 宝石箱」

所在地:東京都世田谷区南烏山4-18-18 小山マンション102

営業時間:12:00〜18:30(水曜日定休)(Movie Walker)