メンタルヘルスの危機は、誰にでも平等に起こりうるもの。エネルギッシュでいかにも強そうなイメージのセレブのなかにも、深刻なうつ状態を経験した人は少なくない。

■ ドウェイン・ジョンソン

最強レスラーとして知られ、現在は俳優として活躍する“ロック様”ことドウェイン・ジョンソン。どこから見ても頑強そのもののドウェインも、過去に経験したうつの苦しみを告白している。

ドウェインが15歳のとき、当時住んでいたアパートから強制的に立ち退かされるというトラブルがあった。突然家を失って精神のバランスを崩した母親は、その数か月後にドウェインの目の前で自殺を図ったという。ドウェインはエクスプレス紙のインタビューで、「母はナッシュビルの高速道路で車を降りて、走ってくる車に向かって歩いて行った。俺は母をひっつかんで、路肩の砂利道に押し戻したんだ」と語っている。母親は事件のあと、まるで何事もなかったかのようにふるまっていたが、母の自殺未遂を目の当たりにした衝撃は、ドウェインの心に消えない影を落としたそうだ。

10代からアメリカン・フットボールの道に進んだドウェインだが、NFL入りを目指すも叶わず、度重なる負傷も災いしてプロとしての道を絶たれてしまう。同時に恋人にも去られ、「間違いなく最悪の時期」を迎えたという。「悪戦苦闘や苦悩は現実なんだ。俺はひどいショックで打ちのめされ、意気消沈した」「もう何一つしたくない、どこにも行きたくないという状態になって、しょっちゅう泣いていた」。このインタビューが掲載された後、ドウェインは自身のツイッターを通じ、「俺たちは誰もがぬかるみを通過する。うつ病に誰かれの区別なんて絶対にないんだ。それがわかるのには時間がかかったけど、打ち明けるのを恐れないことが大事なんだ。特に俺たち男は、(苦悩を)自分の中にしまいこんでしまいがちだからね。君は1人じゃないよ!」と呼びかけている。

■ ライアン・レイノルズ

ヒット作にも恵まれ、愛妻ブレイク・ライブリーは第3子を妊娠中と、幸せいっぱいなイメージのライアンだが、実は非常に繊細なタイプ。子どものころから不安にさいなまれてきたそうで、現在も極度の緊張と闘っていることを明かしている。

ライアンの父親は気難しく、誰に対しても“優しくない”人物だったので、怒りっぽい父をなだめるために、ライアンは家の中を完璧に掃除したり草刈りをしたりと、末っ子ながら“子どもの皮をかぶったマネージャーになって”かいがいしく働いていたという。バラエティ誌のインタビューに答えたライアンは、「僕の不安はそこから始まっていたと思う。自分をコントロールすることで、他者をコントロールしようとしたんだ。当時は全く自覚がなかったけれど、僕は神経質な子どもだった」と語っている。

主演作『デッドプール2』(18)の公開直前に受けたニューヨーク・タイムズ紙のインタビューによれば、20代は「本当にメンタルの不安定な時期だった」とのことで、現在の心配ごと、そして不確かな未来への不安で動けなくなる感覚に陥り、夜中に何度も目が覚めたという。パーティに明け暮れて不安を消し去ろうともしたが、何人かの友人が薬物の過剰摂取で亡くなったことが原因で、パーティからも足が遠のいていった。「“あの件が心配だな”的な軽い不安もあれば、暗闇のどん底にいることもある。楽しくはないね」と語るライアンは、公の場に姿を見せる前は胃が痛くなるし、トークショーの開始前には恐怖と吐き気に襲われるという。不安による症状の改善のために、たとえば映画の宣伝であれば、コミカルな“デッドプール”のキャラクターになりきって臨んだり、瞑想用のアプリ、Headspaceを使ったりして対処しているそうだ。

■ ハル・ベリー

ミスUSA準優勝の美貌を持ち、映画界で順調なキャリアを築いてきたハル・ベリーも、自殺未遂を図った過去を告白している。うつ病になったきっかけは、最初の夫だった元MLB選手、デヴィッド・ジャスティスとの離婚だった。ハルは「(97年当時)私の自尊心はものすごく低かった」とパレード誌で語っているが、幼少時に父親から受けていた虐待経験との連鎖もあったのかもしれない。ハルは車の中にガスを引き込んで自殺を図ったが、母親が自分の死を知った時のイメージが頭に浮かんで、何とか踏みとどまることができたそうだ。ハルはインタビューで、「私の母は子どもたちのために、とても大きな犠牲を払ってきました。自分の手で人生を終わらせるなんて、とんでもなく自分勝手なことだったんです」「自分の長所に目を向けて、自分自身を再構築しなければなりませんでした。誰かに愛されなかったからといって、誰からも愛されない人間という意味ではないんです。もう2度と弱虫にはならないと、自分に約束しました」と話している。

ところが4年後に再婚したR&Bシンガー、エリック・べネイとも、夫の度重なる浮気が原因で離婚。しかも、べネイの浮気相手のなかには、ハルの親しい友人もいたそうで、またも自殺を考えるほど苦しんだという。ハルは「もしも私が最初の離婚を経験していなくて、(もう逃げないという)自分との約束をしていなかったら、きっと打ちのめされていたと思います。車道に飛び込んでいたでしょうね」と話しており、セラピーとカウンセリングを受けることで立ち直っていったそうだ。2度目の離婚後、当時交際していたモデルとの間に長女を、3度目の結婚(2016年に離婚)で長男をもうけたハルは、2児の母となったことで精神的にも強くなったようで、「私の視点は、今までの人生とは違う“母性”の区切りに向けられています。自分のために設けたゴールなんです」と語っている。

UK在住/シャオ(Movie Walker)