2018年に結婚、今年の3月には第一子を出産し、母となった“あっちゃん”こと前田敦子。テレビに出演すれば、変わらない姿を話題を集める彼女だが、公開中の『葬式の名人』では板についた“ママっぷり”を披露している。

『葬式の名人』は、作家の川端康成が大阪府茨木市で過ごした少年時代をもとに執筆した「十六歳の日記」や茨木中学時代の思い出をつづった「師の棺を肩に」などを原案とした人間ドラマ。高校時代の友達、吉田(白洲迅)の死をきっかけに顔を合わせたかつての同級生たちが、ひょんなことから母校で彼の通夜を行うことになり、それぞれの胸に抱えた友への想いが明らかになっていく。

前田が演じるのは、茨木の木造アパートで息子のあきおと2人で暮らすシングルマザーの渡辺雪子。工場での仕事をこなしながら女手一つで息子を育てている、たくましい母親役だ。

女優として様々な役を演じてきた前田だが、母親役は本作が初めて。一緒にたこ焼きをひっくり返したり、吉田が自分の父であることを葬式で知ったあきおが父の遺体の横で眠る健やかな顔を、少し離れた場所から見守ったりと、優しさを帯びた眼差しでキャラクターに真実味を持たせている。

また、子どもの父である吉田の遺体を複雑な表情で見つめたり、家賃の支払いに困窮する自分の現在から旧友たちとの再会にもどこか浮かない顔を浮かべるなど、母親の顔とは異なる一人の女性としての心の機微も繊細な演技で体現。さらにはセーラー服や学ランに身を包み、おでこを丸出しにした高校時代の若々しい姿も披露しており、彼女の演技力の高さを堪能できる作品となっている。

実生活ともリンクした母親を演じ、見事な姿を披露している前田敦子の女優ぶりを『葬式の名人』で大いに堪能してもらいたい。(Movie Walker・文/トライワークス)