熱くてキラキラ輝く若いふたりの眼差しに、暴走しそうな情熱の稲妻が走るたび、ハラハラと息が詰まり、視線を逸らせなくなる。“カンヌ国際映画祭史上初のケニア作品”と聞いただけで大いなる興味を掻き立てられるが、既にテーマとしては珍しくはない同性愛を扱う『ラフィキ:ふたりの夢』(公開中)は、自国であるケニア国内では上映禁止されたという。

その理由や事情――ケニアでは同性愛が違法という社会情勢や文化背景も色濃く描き込まれた本作は、衝撃的であると同時に、初恋のトキメキや戸惑いを真空パックしたような瑞々しさを見事に捉えている。さらに女性の自立や人生の選択といった、世界中でいまだ同じ問題を抱えた我々の、共感をも大いに誘うのだ。

後に米アカデミー賞外国語映画賞へのエントリー条件を満たすため、ナイロビで1週間だけ限定公開が許された際には、観客が殺到して長蛇の列をなしたという。カンヌ、トロント、シカゴなど100以上の映画祭を熱狂させながら、母国では1週公開のみの話題作が、日本のスクリーンに登場した!

■ 許されない“恋心”に揺れる少女の姿に心を動かされる

ボーイッシュな女子高生ケナは、女性は働かず良い妻になるべきという考えや、ゲイの同級生に対する周囲の嫌悪や嫌がらせに、いつからか違和感を覚えていた。そんな時、小さな雑貨店を経営しながら議員選挙に出馬した父の、対立候補の娘ジキとひょんなことから言葉を交わすように。カラフルなファッションとメイクで町でも目立つジキは、見るからにケナと対照的だが、しきたりに縛られず自分らしく生きたいという思いを抱えるふたりは、意気投合。次第に、“気が合う”以上の感情を互いに抱き始める。

理解し合える友を得た喜びを分かち合う中で芽生えた“初めて”の感情――“会いたい”という抑えきれない衝動や嫉妬から恋心を自覚し、戸惑いながらも、その想いを確認し合うまでの過程は、あまりにふたりが溌溂と喜びに満ちているだけに、観ていてキュンキュンさせられる!そんな純粋でひたむきなふたりに、訪れる悲劇――。同性愛者への偏見や嫌悪のハンパなさ、10代の少女への惨い仕打ちは、酷すぎて呆然とするほど衝撃的だ。歴史や宗教や文化背景が違うだけに一概に批判はできないかもしれないが、自分らしく生きたいという願い、人を好きになる自由は、誰にも侵されるべきではないと、本作を観れば、世界中の誰もが思う…少なくとも心を動かされるハズ。

(もっとも、直接的な暴力ではなくとも、全世界を覆う無理解や不寛容による、“いわゆる普通とされるものから少しでもハミ出た人々”への攻撃、集団暴行に近いネットでの誹謗中傷などを、ここに重ねて観る人も少なくないだろうが)

■ 社会を敵に回すことも厭わない女性監督の強さ

ジキたちギャルグループが街中でアイドル然と踊る奇妙さも含め、若者文化、街中の活気、色とりどり煌びやかなファッションや暮らしぶり、ジキ一家が暮らす山の手とケナの住む下町の雰囲気の違い、どこの国でも変わらない普遍的な家族の愛情と問題など、見どころも一杯!社会を敵に回すとわかっていても、本作を完成させた監督ワヌリ・カヒウの意志の強さに感服し、引き受けた女優たちの勇気と生き生きとした演技に感嘆しか覚えない、心揺さぶられる魅惑の1作だ。(Movie Walker・文/折田千鶴子)