『男はつらいよ お帰り 寅さん』が現在公開されている。1969年のシリーズ第1作から50年目を迎える本作の顔といえば、テキ屋として全国を渡り歩く“フーテンの寅”こと、車寅次郎。毎回、故郷の東京・柴又へ帰って来ては騒動を巻き起こしていく寅さん。彼の人間味あふれるキャラクターが大きな魅力の人情喜劇だが、寅さんが恋をしては失恋する“マドンナ”たちが華を添えていることも忘れてはいけない。今回は寅さんが恋をした歴代のマドンナたちから、特に印象的な人物にスポットを当ててみたい。

■ 日本を代表する女優たちが演じる歴代マドンナたち

記念すべき第1作『男はつらいよ』(69)のマドンナは、映画初出演の新派を代表する女優、光本幸子。奈良で再会し寅さんが想いを寄せる幼なじみの冬子を好演した。ハチャメチャな寅さんが巻き起こす騒動が爆笑を誘う作品となっている。

第9作『男はつらいよ 柴又慕情』(72)でマドンナを演じたのは、国民的女優の吉永小百合だ。父親とのぎこちない関係や本当の幸せについて悩む娘、歌子役を演じている。吉永は第13作『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』(74)でも歌子役で再登場して話題となった。

今年惜しまれながら亡くなった八千草薫も、第10作『男はつらいよ 寅次郎夢枕』(72)に、寅さんの幼なじみ・千代役で登場している。いつも失恋している寅さんが、マドンナに告白されるという珍しい展開が観られる。

そして第11作『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(73)のマドンナとして登場するのが浅丘ルリ子だ。旅回りの歌手・リリーこと、松岡清子役を演じ、寅さんと似た境遇に生きるリリーは、この後も第15作『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』(75)、第25作『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』(80)、第48作『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(95)に同役で出演。失恋のイメージが強い寅さんの恋が唯一成就したとされており、リリーはシリーズにとってなくてはならないキャラクターとなった。

第32作『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』(83)でマドンナ・朋子を演じたのが竹下景子だ。寅さんが旅先で住職の娘である朋子に一目ぼれしたことから騒動が巻き起こる。竹下は、第38作『男はつらいよ 知床慕情』(87)でりん子役、第41作『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』(89)でも久美子役という別の役で出演している。

第27作『男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎』(81)で、大阪の芸者・ふみ役でマドンナを演じたのは松坂慶子。東京・柴又生まれの寅さんの、大阪を舞台にした様々な人間模様が描かれる。松坂は、第46作『男はつらいよ 寅次郎の縁談』(93)でも葉子役としてマドンナを演じた。

第42作『男はつらいよ ぼくの伯父さん』(89)に及川泉役で初登場した後藤久美子は、第43作『男はつらいよ 寅次郎の休日』(90)、第44作『男はつらいよ 寅次郎の告白』(91)、第45作『男はつらいよ 寅次郎の青春』(92)と4作連続で同役を演じた。42作は、寅さんの甥である吉岡秀隆演じる満男を主軸にした物語で、43作や44作などを含めて“満男シリーズ”と呼ばれている。寅さんの恋模様ではなく、満男と泉の関係にシフトしたと思いきや、45作では寅さんと満男、2人の恋の行方が同時に描かれているところもおもしろい。

『男はつらいよ』シリーズでは、このほかにも桃井かおりや伊藤蘭、田中裕子など、日本を代表する女優がマドンナとして登場している。

■ 4K映像で寅さんが復活!浅丘ルリ子、後藤久美子も登場

最新作『男はつらいよ お帰り 寅さん』は、サラリーマンを辞めて小説家になった満男を中心に物語が描かれていく。妻に先立たれ、男手一つで娘を育ててきた満男の目の前に、初恋の相手・イズミ(泉:後藤久美子)が現れたことから日常が動きだす。満男の実家には、変わらず毋・さくら(倍賞千恵子)、父・博(前田吟)が住んでおり、寅さんのかつての恋人、リリー(浅丘ルリ子)は近くでジャズ喫茶を営んでいる。寅さんシリーズの懐かしい面々と共に、4K映像で鮮やかに甦った寅さんに出会えるのは、長年のファンにはたまらないはず。

何度もシリーズに登場し、マドンナを演じてきた浅丘や後藤の姿を観ることができるのも大きな見どころ。桑田佳祐が歌うオープニング主題歌「男はつらいよ」に乗せて、どんな心温まる物語が展開されていくのか?物語の続きを、ぜひ劇場で楽しんでほしい。(Movie Walker・文/咲田真菜)