取材許可を得るまでに6年、撮影に2年をかけ、日本で初めて刑務所内の長期撮影を実施したドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』が現在公開されている。米国の受刑者を取材し続けてきた坂上香監督が迫った、島根の刑務所で国内唯一行われている取り組みとは一体…?

官民協働の刑務所として2008年10月に島根県で運営を開始した、「島根あさひ社会復帰促進センター」にカメラを入れた本作。窃盗や詐欺、強盗傷人、傷害致死などの罪によって服役する若者たちが、この刑務所で行われている社会復帰への取り組みによって、新たな価値観を身につけていく様子を追っていく。

警備や職業訓練を民間が担う島根あさひ社会復帰促進センターは、ドアの施錠や食事の搬送は自動化、受刑者は独歩することを許され、胸元に仕込まれたICタグとCCTVカメラにより監視が行われるなど、一般的に抱くイメージとはかけ離れた画期的な刑務所だ。そういった施設面はもちろんのこと、ここで最も革新的なのは、国内で唯一行われている「TCユニット」というプログラムだ。

Therapeutic Community=治療共同体を意味し、英国の精神病院で始まり、1960年代以降、米国や欧州各地に広まったTCは、コミュニティが相互に作用することで新たな価値観や生き方を身につけ、成長を促す場。島根あさひ社会復帰促進センターでは、希望する受刑者が面接などを通して参加を許可され、半年〜2年の間、週3回(約12時間)のプログラムを受け、更生を目指していく。

受刑者たちは実際の事件を用いたロールプレイを行って被害者の気持ちを理解しようとする試みや、自分の過去や起こした事件直前の人間関係について図に示して周囲に説明し、自らの他者との交流の傾向を探るもの。心の中に存在するもう一人の自分に実際に言葉をかけて向き合い、抱えるジレンマの解決を目指す「2つの椅子」と呼ばれるものなど、対話を基本とした教育特化プログラムを実施。時には在籍する期間の長い受刑者が授業を運営することもあるというから驚きだ。

そのような取り組みの中で受刑者たちは、時に笑い、時に涙を流し、時に厳しい言葉を掛け合いながら、自分の罪と向き合っていく。出所者後はTCのスタッフたちと元受刑者たちの定期的な交流会が実施されており、TC出身者の再入所率は他のユニットと比べて半分以下となっているそうだ。

全国で4万人いるという受刑者の中で、このプログラムを受けられるのはわずか30〜40名ほど。“処罰”から“回復”へ…再犯の防止を目指し行われる革新的な取り組みを、ぜひスクリーンで確認して考える機会にしてみてほしい。(Movie Walker・文/トライワークス)