昨年、Netflixオリジナルシリーズ「全裸監督」での怪演が一大センセーションを巻き起こした俳優・山田孝之。2000年代初頭にドラマ「WATER BOYS」や「世界の中心で、愛をさけぶ」、映画『電車男』(05)などの純愛、青春系で一躍脚光を浴びたのも今では懐かしく、近年は『闇金ウシジマくん』シリーズや、ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズで、強烈な存在感を放つエキセントリックな役どころのイメージがすっかり定着していた。そんな彼が、7月17日(金)より公開される主演映画『ステップ』では、等身大なシングルファザーに扮し、さらに役者として進化した姿を見せている。

本作は、「とんび」「流星ワゴン」などで知られる直木賞作家・重松清の同名小説を映画化した心温まる物語。山田は、結婚3年目で妻を亡くし、2歳半になる一人娘を男手一つで育てようと奮闘するサラリーマンの健一を演じている。もちろん裏社会が舞台というわけではなく、派手な事件が起こることもない。言い方は悪いが、描かれているのはごく平凡で、誰もが人生で直面しうることばかり。だが、派手さはないからこそ山田の演技をじっくりと堪能することができる。また、普遍的なドラマだからこそいかに観客の“共感”を誘うかがキモになるが、山田がふとした場面で見せる表情がとにかく絶妙で、ついつい引き込まれてしまうのだ。

娘のなにげない成長に喜ぶ笑顔、育児と仕事の両立で忙殺され「もうだめかも」とくじけそうになる姿、「母親の似顔絵」が描けない娘ためになんとかしようと思い悩むさま、義父母や同僚、元上司など周囲の何気ない優しさに触れ感極まる表情…。どんな場面も自然体で演じており、気づけば「これは自分のことが描かれているんじゃないか」と深く共感させてくれるほどの説得力がある。そして、たとえ平凡な日常でも、自分たちにはひとつひとつの些細な出来事が大事件なのだ、とあらためて気づかせてくれる。

公開に先立って開催されたMovie Walker独占試写会でも、そんな山田を絶賛する声が多数寄せられた。「今まで観たこともない山田さんの姿を見ることができてよかった。義理の家族たちとのやりとり、義父との病院でのシーン、山田さんの語りに感情を揺さぶられた」(32歳/男性・会社員)、「子どもを見る目や、態度がとても穏やかで優しく、すばらしかった。困る表情、複雑な気持ちの時の表現が特によかった」(32歳/女性・教員)「一癖も二癖もある役を演じることの多い役者さんですが、本作品ではどストレートな父親役でした。しかしそこはやはりすごい役者さん。泣いちゃいました」(53歳/女性・会社員)、「異色作の多い山田孝之が、普通の人をここまで素晴らしい演技で見せてくれる。すごい役者!」(59歳/男性・教員)、「すべてがよかった。最初から最後までずっと“健一”でした」(22歳/女性・大学生)など、多くの人の心を掴んでいる。

久々に実年齢と重なる役柄というだけでなく、シングルファザー役は今回が初めてだそう。完成記念トークショーで「今回は演じていません。ついに“素”の山田を出しました!」と自身でも語っていたように、これが今の本来の彼に近い姿。等身大の役を経て、俳優として新たな境地に至ったと言っても過言ではないだろう。現在36歳。今後年齢を重ねていくことで、同様のホームドラマでの活躍も期待したくなる。まずは『ステップ』で、表現により深みを増した彼の演技を確かめてみてほしい。

文/編集部