およそ700年の歴史を持つ禅の里「總持寺」がある町で、地元出身の女性が自ら広告塔として奮闘しています。人呼んで「お節介な観光案内人」!

石川県能登半島輪島市門前町。「禅」「ZEN」の里、曹洞宗總持寺(そうじじ)祖院は国内外に知られています。門前の「お節介な観光案内人」こと宮下杏里さんはこの総持寺通り商店街にある禅の里交流館の管理人で、商店街組合事務局に勤めています。

「お節介な観光案内人」宮下杏里さん

宮下さんは、中学卒業後ふるさと門前を離れ高校、短大は金沢に進学。その後会社員として働き、15年ぶりに地元に戻りました。町の活性化に取り組んで3年になります。

◆宮下杏里さん「門前を出ていった時、ちょうど能登半島地震(2007年)があって復興の途中は金沢にいて何のお手伝いもできなかった。温かい人たちがいいる門前の良さを伝えたいと思って戻ってきた」

2007年能登半島地震は商店街でも大きな被害

門前の魅力を自ら伝えようとユーチューブでも情報を発信しています。

動画には観光客も利用できるレンタルの電動アシスト自転車で、観光スポットをひたすら回るという企画もあります。

電動アシスト自転車で観光一気に回る動画

◆宮下さん「これしたらいいな。門前にこれあったらいいなと思ったものをみなさんと協力してやっていってるというような感じです」

門前を紹介するユーチューブ

月に1度は商店街の店主に呼びかけて門前マルシェを開催しています。

◆宮下さん「各店が月に1回のセールみたいなものを行ってきたが、それを1日にまとめれば町全体がイベントみたいになるのでは?と提案しました」

普段のセールと同じ感覚で無理なく続けられると好評です。

商店街全体を開場とした「門前マルシェ」

開創700年を迎えた總持寺とともに発展してきた、門前町の総持寺通り商店街ですが、少子高齢化が進むなどし現在商店街組合に加盟している34店舗中24店舗の店主が60代以上です。

◆宮下さん「マイナスな意見が出てくるかなと思っていたが、何かしたい!けど何したらいいかわからん。そう言う方がいっぱいいたのでこれは何とかなると思って」

活性化策のひとつとして、考えたのが商店街で販売できる観光客向けのお土産作りです。若手の店主とともにTシャツやお菓子などを制作し、販売にこぎつけました。

「禅」Tシャツなどオリジナルグッズ

◆洋品店経営 下口十吾さん「活気づいて俺もやろうとかという年配の方も増えたので良いことばっかりだと思いますけど。」

下口さんはユーチューブ動画の撮影と編集を担当しています。

宮下さんが一番苦労したことは「仕事のパートナー」として認めてもらうことでした。

◆宮下さん「みなさん子どもの時の”杏里”という感じなので、仕事として付き合う時に、偉そうなことをいうと嫌われるだろうなという思いがやっぱりあったので、心を開いてもらうまでに時間をかけようと思った」

呉服店を営む能村武史さんも、宮下さんの熱意をうけとめた1人です。

◆能村武文さん「杏里さんは最初は面倒くさいヤツやなと思っていた。でも杏里さんの父親が同級生だから知ってる。私がついて行けないようなデジタル化やアート商店街などいろんな案を持ってきていただいて」

父親と同級生の店主に「仕事」の打ち合わせ

宮下さんが進めているのは、商店街をデジタルアートで飾るイベントです。スマートフォンをかざすとキャラクターが登場します。このデジタルを使って協力を得ようと向かったのは、總持寺祖院です。

禅の里 總持寺祖院 「ZEN」は世界共通


◆宮下さん「AR、デジタルアート商店街をしようと思って、ぜひ総持寺祖院さんにもご協力頂きたいと思って」

◆総持寺祖院 高島副監院さん「境内一周したら回ったのと同じように体験できるイメージで。それをバーチャルで。」

街だけじゃなくて、總持寺祖院も一緒にデジタルアートで盛り上げようという話で決まりました!

ARなどデジタルの取り組みも

◆總持寺祖院 高島副監院さん「彼女が今の立場になってから、お寺との普段のやりとりが非常に活性化してきたなと思います。(寺と街が)一緒に取り組んで一緒に積み重ねていく。刺激になりますね」

総持寺祖院にも提案

コロナ禍のおととし、総持寺通り商店街で飲食店をオープンした安田さん。
宮下さんの心強い仲間です。

◆安田俊英さん「自分も何かしたい。開創700年に何かをしたいということで楽しめれば、杏里ちゃん元気印なんで元気印で先頭走ってくれれば。お!門前商店街楽しいことやってるなって、広告塔でもあるとぼくは思ってます」

◆宮下さん「私以上に門前の活性化を考えてきた方だからその方が商店街に来てくれてすごく心強い」

育ててくれた町に恩返しを

育ててくれた町に恩返しを。

宮下さんはかつて賑わっていた商店街の姿を思い描きます。

◆宮下さん「小学生のときは(この通りは)登下校の場所だったんで、ああいう感じが戻ってきたら。戻そうという強い意気込みで頑張ろうと思っています」