だしを取ったあとに捨てられてしまう、鰹節などの「だしがら」でできた「おかか」。石川県野々市の弁当店で提供されるこのおかかには、店を始めるきっかけにもなった店主のある思いが込められています。

野々市市本町の住宅街。わずか6畳半の小さなプレハブ小屋のスペースで1人で、店を切り盛りしているのは店主の森義治さん。

日替わり弁当にサンドイッチ、カツ丼など、ほとんどの弁当に使われているのはこだわりのだし。カツオやサバ、イワシ、昆布などを使った関西風のだしで、和洋問わず、様々なおかずに合うように味付けされています。

森義治店主
「魚の種類があったほうが味が複雑化するというか、奥行きが出るというか。単調な味にならない」

このだしをとった後に出る「だしがら」
店では細かく砕いて味付けしたものを、オリジナルのおかか「かつぶ」として弁当の上にのせています。

15年ほど前まで金沢市のうどん店で店長をしていたという森さん、ただ、しばらくは料理の世界から遠ざかっていました。

森さん
「子どもらのママとお別れして、なかなか飲食の仕事だけでは厳しかったので、生活するために現場に出る仕事行ったりした」

森さんが、再び一念発起するきっかけになったのがこの「かつぶ」でした。

森さん
「年齢的にも自分で何かするってなったらこれが最後かなって。うちのおかんが考えた伝説のおかかがあるので、それをみなさんに知っていただきたかったのもあるし…」

おふくろの味 「かつぶ」 誕生の経緯は

森さんが店で出している弁当のメニューに添えられている「かつぶ」

4年前に亡くなった母・清美さんから受け継いだおふくろの味です。

森さん
「普通においしいと思ったよ、めっちゃご飯に合うやんって」

料理が得意だった清美さんは森さんがうどん店で働いていた当時、だしを取った後に大量に残る「だしがら」を持って帰ってくるように伝え、ひと手間かけたおかかを家の食卓に並べていたといいます。

森さん
「何をするのかなと思ったら圧力なべで圧力かけて。味付けして、おかか的なものを作っていた」

店を開くきっかけになったおふくろの味。
森さんは醤油と砂糖をベースとした味付けにさらに改良を加え、「かつぶ」をのせた弁当の販売を始めました。

よく来ているという顔馴染みの客もこの味の販売を喜びます。

客は…


「(かつぶは)優しい味で、母の味でしたね、さすがにね」

おふくろの味 地域の子供たちにも届ける

森さんは今、このかつぶを地域の子どもたちにも食べてもらう取り組みとして、野々市市内で開かれている子ども食堂や、スポーツ少年団をまわり、育ち盛りの子どもたちに自慢の味を提供しています。

提供:森義治

森さん
「おいしかっただけじゃたぶんかつぶは生まれなかった。あの人(清美さん)自分の友達とかに配っとってんて。おいしいものをみんなに振る舞って、みんなを笑顔にしていたのがやっぱり心のどこかであるので。おれもそうしたいなと思ったな」

派手さはなくても愛情たっぷり、優しさの詰まったおふくろの味を提供する森さん。地域に笑顔を届けるため腕を振るい続けます。