東京・世田谷区を走行中の小田急線内で乗客が男に刃物で刺されるなどして重軽傷を負った事件の発生から1年となるのを前に、警視庁と小田急電鉄は無差別襲撃事件を想定した訓練を行い、初めて「車いすの避難」を想定した訓練も組み込みました。東京オリンピック・パラリンピックから1年となる中、いま、東京のバリアフリーはどのようになっていて、どう進むべきなのでしょうか。ベストセラー「五体不満足」の筆者・乙武洋匡さんに話を聞きました。

 8月5日に行われた訓練は走行中の小田急線・代々木上原−新宿駅間での異変を想定し、新宿駅で警察官が突入して犯人役を取り押さえました。そしてこの日、小田急電鉄は初めて「車いすに乗った乗客の避難手順」を確認しました。今回初めて行われた「車いすを想定した訓練」について、乙武さんは「正直、半々の思い。やっと想定に入れてくれたんだという安堵の気持ちと『今さら?今までは考えたことなかったの?』という寂しい気持ちと、正直両方ですね」」と、複雑な気持ちを話してくれました。今回の小田急電鉄の訓練では車いすについては想定されたものの、目の不自由な人など他の障害のある人は想定されていませんでした。

 東京オリンピック・パラリンピックから1年を迎える中、乙武さんは日本では車いす用スロープなどハード面でのバリアフリーが進む一方、サービスなどのソフト面のアップデートが進んでいないと課題を指摘します。

 乙武さんは障害者への配慮に欧米との差を感じるとして「ヨーロッパでホテルに泊まると、多くのホテルではチェックイン時に『もし宿泊中に火災などの災害が起こった時、あなたは自分で脱出ができるか。できない場合、部屋まで何人のスタッフが行けばいいのか』みたいなことを記入する欄がある。きちんと自分たちのことも災害などの緊急時にケアしてもらえるんだな、配慮をしてもらえているんだなという安心感があった」と話します。そして、この状況を変える鍵になるのは、教育の現場だと指摘します。乙武さんは「先進国の中で、日本は長らく障害のある子どもとない子どもを別々に教育していくことを続けていた。そのため、健常者の中で障害者と共に学び育ったという経験を持つ人が圧倒的に少ない。教育というのはあくまで社会に出るまでの助走期間・準備期間なので、実際に社会に出た後『共生社会』を実現していく上で考えれば、教育の場で多少のハレーションが起こったり非合理性が生まれても、長い目で見れば、私はそこで交じり合わせておくことは非常に大事になるのかなと思っています」と話しました。