東京大学(東大)は6月6日、細胞ファイバ技術を用いて、ヒトiPS細胞を効率よく増殖させる技術の開発に成功したと発表した。

同成果は、東京大学生産技術研究所の竹内昌治教授、同大学院生の池田和弘氏らの研究グループによるもので、6月6日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

ヒトiPS細胞を用いる基礎研究は比較的少量の細胞数で行われており、これまで簡便かつ安定的な培養法としては、シャーレの底面に細胞を接着させる形で増殖させる二次元培養法が用いられてきた。

一方で、大量の細胞数を要する再生医療への応用段階では、細胞を培地中に浮遊させる形で培養する三次元培養法がコスト面において有用とされている。しかし従来の三次元培養法では、ヒトiPS細胞が不均一なサイズで凝集塊を形成し、特に大きな凝集塊の内部では酸素や栄養の不足から細胞死が起こりやすく、全体として増殖率が低下したり、ヒトiPS細胞の性質が失われたりしやすいという問題があった。

細胞ファイバ技術とは、内部に細胞を封入した中空状マイクロファイバを作製し培養する技術で、同研究グループによって開発されてきた。同技術により、神経や血管などヒモ状の三次元組織を作製できることや、移植時の免疫拒絶反応から内部の細胞を保護できることが知られている。

今回の研究では、細胞ファイバ内部の凝集塊のサイズが、マイクロファイバ内径に従って一定の厚みで維持されることに着目し、厚みや細胞の凝集を制御しつつ細胞を増やす三次元培養に応用した。これにより、内部で形成される細胞凝集塊を、十分に細く均一な直径に維持し、細胞死を抑制することに成功。さらに、ヒトiPS細胞ファイバの内部に細胞外基質を加えることで、これまでにない高効率での増殖を実現した。

同培養法では、内部の細胞が十分に増えた後、細胞を取り出し、新たにヒトiPS細胞ファイバを作製し培養再開するという継代作業を行うことも可能。継代を繰り返すことで、長期に渡って高い増殖率とヒトiPS細胞の性質が維持されることがわかっている。

同研究グループは今回の成果について、量と質を担保しなければならない再生医療応用のためのヒトiPS細胞培養法として応用されることが期待されるとしている。今後は、この培養法をどのような設備を用いて実際の医療応用レベルの大量培養へと適用していくか検討していきたい考えだ。