東京農工大学(農工大)は7月21日、シリコン表面に高強度のフェムト秒レーザーパルスを照射することによって、光と結合した電子の集団振動現象である表面プラズモンポラリトンの発生を観測することに成功したと発表した。

同成果は、東京農工大学大学院工学研究院 宮地悟代准教授、同大学院生 萩谷将人氏(研究当時)、京都大学 宮崎健創名誉教授らの研究グループによるもので、7月17日付けの米国科学誌「Physical Review B」に掲載された。また、8月31日〜9月1日に東京ビッグサイトで開催される「イノベーション・ジャパン 2017」にも出展される予定。

表面プラズモンポラリトン(SPP)は、2つの物質の境界面に存在し電磁波と結びついている、電子の粗密振動波で、その波長は、励起に必要な光の波長よりも短く、電子の周囲に強力な電場が発生するため、最近では高感度光検出器や高効率太陽電池、高感度ガス・バイオセンサー、高効率LEDなどさまざまな応用に利用されている。

一方、絶縁体や半導体には自由電子が存在しないため、SPPは発生できないというのが定説であった。1980年代に高強度のレーザー光を照射すると固体表面が金属化してSPPを発生できる条件があると理論的に予測されたものの、観測が難しくこれまで実証はされていなかった。

今回、同研究グループは、フェムト秒レーザーパルスの照射でシリコン表面にSPPが発生できるように、シリコン製の回折格子を設計し、精密に作製されたものを準備した。その表面に入射角度を変えながらレーザーパルスを照射し、光検出器によって測定した反射光の強さから表面反射率を求めたところ、回折格子の溝に水平な方向の偏光(s偏光)では入射角度を変えても反射率は単調に変化するだけであったが、回折格子の溝に垂直な方向の偏光(p偏光)では特定の入射角度で反射率の急激な減少を観測した。

この結果は、金属でのSPP発生の発見の基となった観測結果と酷似するものであり、同研究グループは、反射率の減少からシリコンと大気の境界面でSPPが発生しているものと考察している。同現象を利用することで、レーザー光を照射するだけでナノメートルサイズの微細な溝や穴を直接削り出すことができるため、薬剤などが不要な新しい微細加工技術の実現が期待される。