東京都医学総合研究所は、リソソームの損傷を細胞が認識するメカニズムを明らかにしたと発表した。

オートファジーは細胞質の内容物をリソソームに運んで分解する機構で、損傷を受けたリソソーム自体もオートファジーにより除去される。しかし、リソソームの損傷が認識されてオートファジーがおこる仕組みについては不明だった。今回、損傷を受けたリソソームから細胞質へ漏れ出した糖タンパク質が感知され、ユビキチン化されることがオートファジーの引き金となるとわかった。

同成果は、東京都医学総合研究所 ユビキチンプロジェクトの吉田雪子 主席研究員・松田憲之 副参事研究員と田中啓二 所長らの研究チームと、大阪大学医学系研究科の吉森保 教授らとの共同研究によるもの。詳細は、米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America (PNAS)」(オンライン版)に掲載された。

糖タンパク質は細胞の外側や生体膜で囲まれたオルガネラの中に存在し、細胞質には存在しない。しかし、同研究グループは、細胞質には糖鎖を認識してユビキチン鎖を付加するユビキチンリガーゼが存在することを明らかにしてきた。ユビキチン鎖は特異的なオートファジー受容体と結合し「選択的オートファジー」を誘導することが知られている。今回、リソソーム膜が損傷を受けることで、糖鎖が細胞質に漏れ出てくることがオートファジーの誘導を引き起こすのではないかという仮説の検証を行った。

その結果、糖鎖を認識するユビキチンリガーゼFBXO27はリソソームに損傷を与えると迅速にリソソームに集積するとともに、糖タンパク質をユビキチン化する現象を見出した。質量分析装置を用いた解析により、リソソームの損傷時にユビキチン化を受ける糖タンパク質LAMP2が特定された。また、FBXO27やLAMP2の細胞内のタンパク量を実験的に低下させると、損傷リソソームの除去が遅れることやオートファジーの誘導が遅れることも確認された。

これらの結果より、リソソーム損傷により細胞質へ露出したLAMP2などの糖タンパク質糖鎖が、FBXO27によってユビキチン化を受けることが、損傷リソソームのオートファジーによる除去の引き金になることが示された。

同研究グループは「リソソームの損傷は尿酸などの結晶やアミロイド繊維により引き起こされる。アルツハイマーなどの神経変性疾患がアミロイド繊維によるものであることを考えると、これらの疾患がリソソームの損傷を引き起こす可能性もある。FBXO27は脳に多く存在するタンパク質であるため、これらの疾患の防御や発症にどのように関わるのかについて研究を進展させていきたい」とコメントしている。