●さすが日本初の国民保養温泉地! 『千と千尋の神隠し』の舞台も!?
四万(しま)温泉は、草津温泉など名湯が多い群馬県の中でも断然オススメの温泉地。上信越高原国立公園内の豊かな自然環境を実感できる上に、開発が規制された温泉街の落ち着いた風情も魅力だ。「四万種類の病に効く」と言い伝えられ、源泉かけ流しの宿も多く、飲泉所もある。まさに保養に向いた温泉地で、日本で最初に国民保養温泉地に指定されたのも当然と納得できる温泉地である。

○名湯をはった共同浴場は募金制

四万温泉は四万川沿いに温泉宿が点在し、北から「日向見(ひなたみ)」「ゆずりは」「新湯(あらゆ)」「山口」「温泉口」の5つの地区がある。高速バスも発着し、観光協会もある中心部は「新湯(あらゆ)」地区。「四万たむら」と「積善館」の、四万温泉を代表する宿二軒があるのも、このエリアだ。

高速バスは「四万グランドホテル」の前が終点。四万川沿いに無料駐車場もあるので、車でも気軽に立ち寄れる。「四万グランドホテル」は、後で紹介する「四万たむら」の姉妹館。品数豊富な夕食バイキングが自慢の宿で、気軽に泊まれる手頃な宿泊料も魅力的である。さらに、ホテル宿泊者は「四万たむら」の入浴料が割引になるのもうれしいところ。

湯量豊富な四万温泉では各地区に共同浴場(外湯)があり、新湯地区の「河原の湯」は、名前の通り「四万グランドホテル」前の河原にある。9時から15時の間、寸志の箱に募金するだけで入浴できる。季節によってはやや熱めだが、四万温泉でも珍しい鉄分含有の名湯に浸かれば、四万温泉の泉質の素晴らしさを実感できる。

●information
四万グランドホテル
住所: 群馬県吾妻郡中之条町四万4228

共同浴場「河原の湯」
住所: 群馬県吾妻郡中之条町四万
アクセス: JR吾妻線「中之条駅」からバス約30分、終点「四万温泉」下車すぐ。または、東京駅発高速バス「四万温泉号」終点下車すぐ

○ここも千と千尋の神隠しの舞台!?

四万温泉へ行ったなら、「四万たむら」の充実した温泉をぜひ味わいたい。北海道の登別温泉であれば「第一滝本館」での入浴はマストなのだが、同様に、四万温泉なら「四万たむら」である。特に四万温泉初心者ならなおさらだ。

「四万グランドホテル」から「四万たむら」へ行く途中、左手に「積善館」本館がある。スタジオジブリのアニメ映画『千と千尋の神隠し』の舞台と噂される宿で、確かに、赤い橋の向こう側に温泉がある様子は似ている。しかも、館内には、映画で出てきたようなトンネルや、普段は非公開だが、女中部屋のモデルと噂される部屋まである。

「積善館」本館は、現存する最古の旅館建築とも言われる、歴史と伝統が魅力。男女別浴場の「元禄の湯」も有名で、日帰り入浴も可能だ。湯治宿の本館、登録有形文化財の山荘、高級宿の佳松亭があり、どの宿泊棟に宿泊しても館内全ての温泉浴場を利用できる。温泉に加えて、本格的な懐石料理も好評だ。

●information
四万温泉「積善館」
住所: 群馬県吾妻郡中之条町四万甲4236
アクセス: JR吾妻線 中之条駅からバス約30分、終点「四万温泉」下車すぐ。または、東京駅発高速バス「四万温泉号」終点下車すぐ

「積善館」を味わったら、今度こそ、湯めぐり三昧の宿「四万たむら」に行ってみよう。

●名湯「四万たむら」で温泉三昧--入浴後は若女将おすすめのスイーツを
○混浴露天風呂も含め全6つの浴場

「四万たむら」は7本の自家源泉を所有し、5カ所の男女別浴場と1カ所の混浴露天風呂の全てが源泉かけ流し。高級旅館だが、日帰り入浴も可能だ。入浴料は税込1,730円と少々値が張るが、間違いなくそれだけの価値がある温泉である。姉妹館「四万グランドホテル」の宿泊者は、税込540円の湯巡りパスポートを購入すれば、宿泊当日に加えて翌朝も入浴できる。

全ての温泉浴場が素晴らしいが、どれかひとつを選べと言われれば、露天風呂「森のこだま」の名を挙げたい。四季折々の風情を満喫できる上に、温泉も大湯量源泉かけ流しで猛烈にフレッシュな湯だ。河と滝がライトアップされ、夜中でも風情を楽しめるのがいい。なお、夜は宿泊者専用となる。

多数ある内湯の代表格は、檜風呂「御夢想(ごむそう)の湯」。照明が控えめで、やや薄暗い環境だが、総檜造りの素朴な木造建築の風情を一層引き立てており、落ち着いた入浴が楽しめる。もちろん、初めて利用する場合は、全ての浴場に一通り入っておきたいが、リピーターになると「森のこだま」と「御夢想の湯」の入浴に、大半の時間を費やすことになる。何度入っても長時間入っても、全く飽きることがない、日本を代表する名温泉浴場だ。

○老若男女に愛されるあま〜いお豆

最後に、四万温泉のグルメを紹介しよう。地元の特産品は「高原 花まめ」。お着き菓子として、各客室に甘納豆が置かれており、そのおいしさから大好評で、売店の土産物でも一番人気を誇っている。豆菓子と聞くと高齢者向けと思うかもしれないが、筆者の小学生の甥も自発的に購入したほどで、まさに老若男女に受けている。

館内で湯めぐり三昧の「四万たむら」では、水分補給も大切。大浴場「甍の湯」(いらかのゆ)の入口前に冷水機が設置されているが、休憩を兼ねてラウンジ「こてまり」を利用するのもオススメだ。

「若女将おすすめオリジナルスイーツ」は、単なるアイスの盛り合わせに見えるが、実は中に暖かいさつまいもが入っており、温度と甘さが異なる食材のハーモニーが絶品! 一度食べたら、忘れられなくなってしまう。特産の花豆の甘納豆が頂上に飾られ、盛り付けの美しさも楽しめる逸品だ。

●information
四万温泉「四万たむら」
住所: 群馬県吾妻郡中之条町四万4180
アクセス: JR吾妻線 中之条駅からバス約30分、終点「四万温泉」下車すぐ。または、東京駅発高速バス「四万温泉号」終点下車すぐ

群馬県を代表する名湯、四万温泉の魅力、いかがだっただろうか。今回は夏の観光シーズンに向けて紹介したが、実は四季折々に訪れたい温泉地だ。春の新緑や秋の紅葉も素晴らしく、雪は多くはないものの、冬は天候により雪見風呂も楽しめる。湯量豊富な上に、芯まで温まる泉質なので、涼しい時期や寒い時期に訪れるのもまたいい。

○筆者プロフィール: 藤田聡
温泉研究家、オールアバウト「温泉」「紅葉スポット」ガイド。温泉旅行検定試験で2年連続日本一になり、検定協会から「温泉旅行博士」の称号を授与される。温泉地を中心に周辺観光地の取材・撮影を行い、海外旅行にも決して負けない、国内旅行の奥深い魅力をメディアで発信中。紅葉や一本桜、夜景や四季の花などの絶景スポットにも精通している。