フランス・ロワールの古城を訪れた和製レオナルド・ダ・ヴィンチが次に向かったのは、イタリアのフィレンツェ。町全体が美術館と呼ばれる古都で見るべき芸術を教えてくれます。

○冷静と情熱のあいだに和製レオナルド

「チャオ。俺の名前は堂貧地 玲於奈。"どうびんちれおな"ってオンナのコみたいな名前だけど男だ。小学生の頃のイタリア旅行で、ミ・キアーモ・レオナ・ドゥビンチって自己紹介をしてから、みんなが俺のことをレオナルド・ダ・ヴィンチだっていうもんだから、真に受けた母親が美大に通わせ、今は画家として生計を立てている。現在、"和製レオナルド"として絶賛売り出し中だ。

画家の俺が毎年必ず訪れる街、それがフィレンツェだ。こんなにも芸術の歴史が息づいた街はそうそうあるもんじゃない。今回は、フィレンツェで観るべき芸術作品を案内しよう。

まずは、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の大きな丸屋根だな。クーポラとも言う。クーポンじゃないぞ。この屋根からルネサンスが始まったとも言われる、フィレンツェのシンボルだ。まぁ、大きくて目立つからこれを見逃すツーリストはいないだろう。

これも観光客向けだが、アカデミア美術館のダヴィデ像は美術の教科書で見たことがあるだろう。ミケランジェロの傑作だ。美術館が混んでたら、市庁舎前にレプリカが展示してあるからそれで我慢するんだな。なにせタダだ。

美術の教科書を追いかけるなら、そのままウフィッツィ美術館に行こう。ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』と『春』は忘れないように。欧州旅行中だからかカップヌードルを食べたくなるかもしれないが、我慢だ。ここには我らがレオナルドの『受胎告知』もある。

しかし、本当の意味で観てほしい絵は別にある。ルネサンス都市フィレンツェの象徴とも言える絵はサンタ・マリア・ノヴェッラ教会にあるマザッチオの『聖三位一体』だ。この遠近法こそが、ルネサンス絵画の出発点とも言われているんだ。地味だが、ある意味で一番フィレンツェらしい絵。壁に穴が空いているように見えるだろう? 当時の人々にとっては、これは新しい物の見え方だった。今でいればVRみたいなものさ。

おっと時間だ。今日は俺の30歳の誕生日でね。大聖堂のクーポラで約束があるんだ。では」

お誕生日おめでとう和製レオナルド君。冷静と情熱のあいだに生きる画家に幸あれ。以下、用語解説です。

サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂
「花の聖母」と呼ばれる大聖堂はフィレンツェのシンボル。ドゥオーモとも呼ばれる。1296年に工事が始まり、1436年に完成した。ルネサンス初期の画家ジオットが設計した鐘楼や、詩人ダンテが洗礼を受けたといわれる洗礼堂が付属する。

この屋根からルネサンスが始まった
丸屋根(円蓋ともクーポラとも)は古代ローマの建築に見られる様式で、サンタ・マリア・デル・フィオーレの丸屋根もローマのパンテオンを手本としている。ルネサンスが古代復興、再生を意味することは、このローマを思わせる丸屋根に象徴されている。

ダヴィデ像
ミケランジェロの傑作彫刻。世界で最も有名な彫刻のひとつかもしれない。大理石の塊から掘り出した本作はかつて市庁舎前に置かれ、フィレンツェ住民の心の支えだった。現在は風化による損傷を避けるためアカデミア美術館内に展示されている。

市庁舎前にレプリカが展示してある
本物がアカデミア美術館に展示されたので、もともとあった市庁舎前(シニョーリア広場)には、レプリカのダヴィデ像が立っている。もちろん無料で見ることができる。

『ヴィーナスの誕生』
説明不要の有名絵画。現在でも様々な広告やクリエーションに引用されたりする。長らくデザインに関わる人には、adobeのillustratorを立ち上げる度に彼女の顔を見たことと思う。

カップヌードルを食べたくなる
日清食品のカップヌードルのCMにこのヴィーナスが登場するものが昔あった。いずれにせよ、日本食から離れる長期のヨーロッパ旅行では、カップラーメンを数個持ってきておくと、ホテルで懐かしい味を楽しめるのでオススメ。

マザッチオの『聖三位一体』
派手さはなく、有名ではないがルネサンス絵画の出発点だと言われる傑作。サンタ・マリア・デル・フィオーレの丸屋根を設計した建築家ブルネレスキの協力のもとに描き上げれたとされるこの絵は、平面絵画における遠近法をものにしてみせた。1427年頃に描かれたこの絵から始まって、19世紀後半に印象派が登場する約450年もの間、西洋絵画は遠近法に縛り付けられていく。

大聖堂のクーポラで約束がある
「わたしの30歳の誕生日に、フィレンツェのドゥオーモのクーポラで会ってね」は大ヒットした小説・映画『冷静と情熱のあいだ』の中に登場するセリフ。
○世界遺産データ

『フィレンツェの歴史地区』。文化遺産。1982年登録、2015年範囲変更。イタリア共和国。
○筆者プロフィール: 小俣 雄風太(おまたゆうた)

「世界遺産検定」事務局の編集広報部員。自転車ロードレースに魅せられ本場フランスに一年留学。その後イギリスのサイクリングアパレルブランドで広報を務め、世界各地で自転車に乗るうちに世界遺産を強く意識するようになる。検定を通じて世界遺産の魅力と意義を広めたいと奮闘中。

○世界遺産検定とは?
世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催: 世界遺産アカデミー
開催月: 3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地: 全国主要都市
受検料: 4級3,000円、3級4,500円、2級5,500円、1級9,700円、マイスター1万9,000円、3・4級併願7,300円、2・3級併願9,500円
解答形式: マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法: インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて。
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