金沢大学は、同大学理工研究域電子情報学系の福間剛士教授と理工研究域バイオAFM先端研究センターの宮田一輝助教らの研究グループが、フィンランドAalto大学の研究グループと共同で、従来の約50倍の速度で液中原子分解能観察が可能な高速周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)を開発し、水中でカルサイト(方解石、CaCO3)の表面が溶解する様子を原子レベルで観察することに成功したことを発表した。この成果は6月26日、American Chemical Society「Nano Letters」のオンライン版に掲載された。

カルサイト(方解石、CaCO)は、地球の地殻に最も豊富に存在する鉱物であり、その溶解過程が地球規模の炭素循環、気候、地形、水性環境などに重大な影響をおよぼすことが知られている。これらの大規模かつ長期的に生じる現象を正確に予測するためには、カルサイトの溶解がどのように生じているのかを原子レベルで正確に理解することが望まれるが、既存の計測技術では原子レベルの動的な挙動を液中で直接観察することはできず、溶解機構に関する正確な理解は得られていなかった。

このたび研究グループは、液中で原子の動きを直接観察することのできる高速周波数変調原子間力顕微鏡(Frequency Modulation Atomic Force Microscopy: FM-AFM)の開発に成功した。

また、同技術を用いて、カルサイトの表面が水中で溶解する様子を原子レベルで観察することにも成功し、単分子ステップに沿って幅数nmの遷移領域が、溶解過程における中間状態として形成されることも発見した。

今回、カルサイトの溶解過程に関する原子レベルでの詳細な理解が得られたことで、これまで巨視的な溶解過程のシミュレーションに用いられてきた経験的パラメータが持つ物理的意味を根本的に理解できる。これにより、自然界でのさまざまな溶液環境中における溶解挙動を正確に予測することが可能となり、将来的には大規模な炭素循環の予測精度向上にも貢献できると説明している。

また、開発した高速FM-AFM技術は、カルサイトの溶解過程だけでなく、さまざまな鉱物、有機分子、生体分子の結晶成長・溶解、自己組織化、さらには金属腐食、触媒反応など、幅広い固液界面現象の原子スケール観察に用いることができる。これらの現象も従来は原子レベルで直接観察する手段はなかったため、今回開発された技術により、さまざまな未知の現象が発見されることが期待できるとしている。