北海道大学は、海洋環境の変化を骨格の化学組成の変化として記録することができる造礁性サンゴ骨格を用いて、オマーン湾に湧昇流が発生した時期と発生期間を明らかとすることに成功したと発表した。

同研究は、北海道大学の渡邉貴昭、渡邊剛、山崎敦子(東京大学大気海洋研究所兼務)、アーヘン工科大学のMiriamPfeiffer、キール大学のDieterGarbe-Schönberg、スルタン・カブース大学のMichelR Claereboudtらの研究グループによるもので、同研究成果は、英国時間7月4日に「Scientific Reports」にてオンライン公開された。

世界有数の湧昇域であるアラビア海のオマーン湾における湧昇流は、季節変化するモンスーンの影響を受けて発生していることが示唆されてきた。しかし、この湧昇流の観測には、海水温、栄養塩量、海洋表層の一次生産量といった多くの観測記録が必要であり、これらの広範囲かつ連続的な観測には困難を伴うため、湧昇流の発生頻度や発生日数を知ることは困難だった。

造礁性サンゴの骨格には樹木のように年輪が刻まれ、過去の大気・海洋の環境変動が1週間〜1ヶ月間程度の細かい精度で記録されている。同研究グループは、アラビア海のオマーン湾に生息する造礁性サンゴ群体から長さ71cmの骨格柱状試料を採取し、年輪を2週間に相当する細かさで区切り、過去26年間分の炭素安定同位体比(以下、炭素同位体比)、海水温指標及び塩分指標である酸素安定同位体比(以下、酸素同位体比)、Sr/Ca比の化学分析を行った。従来、造礁性サンゴ骨格の炭素同位体比には様々な変動要因があげられており、統一的な解釈はなかったが、この変動要因を精査し、観測記録、復元した海水温及び塩分変動と比較することで、炭素同位体比が過去の湧昇流を記録するか検証した。

検証の結果、造礁性サンゴ骨格は、湧昇流発生時に起きる深層水の湧き上がりと植物プランクトンの増加を炭素同位体比の急激な減少として反映していた。また、その下がり幅が、観測記録の海水温変動から推測した湧昇流の発生期間と相関関係にあることがわかり、これにより湧昇流の発生日数を復元できるようになったという。

同研究により、造礁性サンゴ骨格を調べることで、湧昇流の過去の発生時期と発生日数を調査できることが解明された。100年を超える長期の記録を復元できるサンゴを用いれば、過去の湧昇流の発生頻度と発生日数を推定できるようになるため、さらに過去の湧昇流の様子を調査することで、湧昇流の発生メカニズムの理解の深化が期待さるということだ。