海洋研究開発機構は、スパースモデリングと呼ばれるデータ解析手法により、豊後水道における長期的スロースリップイベントすべり急変位置を特定し、これまでの手法よりもすべり域内部の構造を詳細に推定することができたと発表した。

同研究は、海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センターの中田令子特任技術研究員、堀高峰グループリーダー、地球内部物質循環研究分野の桑谷立研究員らの共同研究グループによるもので、同研究成果は、日本時間7月21日に英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

豊後水道下に沈み込むフィリピン海プレートの境界面では、約5〜7年に一度、約1年かけてゆっくりとすべるスロー地震の一種、長期的スロースリップイベント(Long-term slow slip event、以下L-SSE)と呼ばれる現象が観測されている。豊後水道周辺で1997年、2003年、2010年に発生したL-SSEは、すでにすべり分布の解析が行われており、3回ともほぼ同じ中心から外側へ向かって緩やかに変化する分布が推定されている。すべり域は連続的に広がっているようにも見えたが、従来の手法では、データの不十分さを補うためにすべり分布のなめらかさを前提としており、すべり域内部が本当になめらかな分布をしているかは不明だった。

そこで同研究グループは、地殻変動観測データの不十分さを補い、知りたい情報を正確に抽出することが可能となるスパースモデリングと呼ばれる手法を適用し、L-SSEの詳細なすべり分布を推定した。その結果、0.2m以上すべった領域の浅部側では、すべり量が0mまで急に減少し、0.1m以上すべった領域の内部でも、すべり量が半分近くまで急に減少する部分があり、従来考えられていたよりも急な空間変化だったという。また、浅部の急変位置は地震発生帯の下限および350℃の等温線と、すべり域内部の急変位置は深部低周波微動発生域の上限とよく一致していた。つまり、L-SSEのすべり域は、地震発生帯や深部低周波微動発生域まで緩やかに広がっているのではないということが示された。

同研究により、地震・L-SSE・深部低周波微動における発生領域の空間的なすみわけが、これまでよりも明瞭に見えるようになった。今後は、引き続き豊後水道L-SSEの解析を進めるとともに、紀伊水道や東海地方の地殻変動観測データに対しても同手法を適用し、南海トラフ全域の地震発生サイクルシミュレーションを高度化していくという。また、2011年東北地方太平洋沖地震の余効すべりを解析し、同域の応力が集中する場所についても検討を進める予定だということだ。