福井県恐竜博物館は、長崎県西海市大島町の海岸に露出する地層から、ハドロサウルス上科(鳥脚類恐竜)の歯の化石が発見されたことを発表した。新たに発見された歯の実物化石と複製は、西海市と福井県立恐竜博物館にて一般公開される。

このたび発見された歯の化石は、5本の歯が密集して並ぶデンタルバッテリーの一部(右の歯骨歯=下顎の歯:5本、1点)。大きさは42mm×27mm×10mmで、歯冠部は菱形。舌側は2本の稜線があり、うち1本が発達し、歯が接して並ぶ"デンタルバッテリー構造"を形成した、イグアノドン類の右歯骨(下顎)の歯。歯は前後にやや狭く細長いことなどから、比較的進化した鳥脚類恐竜であるハドロサウルス上科に属すると考えられるという。

同博物館によれば、今回の化石にはふたつ重要性があるという。ひとつめは、歯に見られる形態から、ハドロサウルス上科の進歩的なグループであるハドロサウルス科には属さないものの、ハドロサウルス科への進化をたどる上で重要な種類の恐竜と考えられること。同様なハドロサウルス上科の恐竜は、中国やモンゴル、北米、ヨーロッパの白亜紀後期の地層から発見されており、その記録のほとんどは大陸内部のものであった。しかし近年、福井県勝山市から日本最古のより原始的なハドロサウルス上科の化石が新属新種として発見され、今回のようなハドロサウルス科への進化段階へと近づいた化石が発見されることから、これら鳥脚類の進化を知る上で日本はさらに重要な場所となってきたという。なお、デンタルバッテリー構造となった歯の化石は日本では極めて稀で、今回のようなハドロサウルス科でない種類の鳥脚類としては日本初の発見だということだ。

ふたつめは、化石の保存状態からみた追加標本の可能性。デンタルバッテリー構造を構成する歯は隣接する歯と軟組織で結合されており、恐竜の死後、軟組織の腐敗などにより個々の歯は分離しやすく、多くの例では顎は歯が抜けた状態で発見される。しかし、同標本は歯が繋がっており、探索すれば追加の部位がさらに得られる可能性があると説明している。

今回の恐竜化石は、西海市大島町の古第三紀とされていた地層から発見され、西海市にも白亜紀後期の地層があると判明した。恐竜化石の発見で、定着していた地層の時代を大きく見直す珍しいケースとなった。白亜紀後期は約1億年から約6600万年にわたるが、少なくとも花崗岩類の年代よりも新しいということのほかは、その地層の広がりや長崎半島の三ツ瀬層との関係も不明である。この予想外の恐竜化石の発見により、西海市の地質について再検証する調査が必要となってきたとしている。こうした地質学的問題の解明のため、西海市は福井県立大学恐竜学研究所との共同調査研究を開始しているとのことだ。

なお、新たに発見された歯の実物化石と複製は、下記のスケジュールで西海市と福井県立恐竜博物館にて一般公開される。西海市:7月29日〜8月6日 9時〜17時、西海市大島総合支所(実物化石を展示) / 8月8日〜8月14日 9時〜17時、西海市役所(実物化石を展示) / 8月15日〜8月30日、西海市崎戸歴史民俗資料館(実物化石を展示) / 8月31日以降、西海市崎戸歴史民俗資料館(複製を常設展示予定)。福井県:7月29日〜9月1日 、福井県立恐竜博物館エントランスホール1F(複製を展示)、9月2日〜10月15日、福井県立恐竜博物館エントランスホール1F(実物化石を展示)。