情報通信研究機構(NICT)は7月28日、本来揺れていない物体が10Hz付近で揺れて知覚されるジター錯視の揺れが、ヒトの脳内にもともと存在するアルファ波のリズムから生じることを発見したと発表した。

同成果は、NICT脳情報通信融合研究センター 天野薫主任研究員らの研究グループによるもので、7月27日付の米国科学誌「Current Biology」オンライン版に掲載された。

アルファ波とは脳から発生する8〜13Hz程度の電気的な振動のことで、目を閉じたり、リラックスしたりするときに顕著に現れる。最近の研究では、たとえば見ている対象に注意を向ける機能と密接に関係しているなど、視覚情報処理への関与が報告されていたが、視知覚とアルファ波の関係は相関関係の議論の域を出ていない状況であった。

今回、同研究グループは、本来揺れていないはずの物体が、1秒間に10回程度揺れて感じられるジター錯視と呼ばれる現象に着目。アルファ波のリズムが速い人はジター錯視も速く、遅い人は遅く見えるということを明らかにした。また、アルファ波の周波数は個人内でもわずかにゆらぐが、このゆらぎに応じてジター錯視の見え方も変化するという。

さらに、同研究グループは、経頭蓋電気刺激を被験者の後頭部に与えることで、アルファ波が持つリズムの速さを人工的に変化させる技術を開発。同技術を用いてアルファ波のリズムを速くしたり遅くしたりしたところ、被験者が感じるジター錯視の揺れも同様に変化した。

今回の研究結果からは、脳の別々の場所で処理された形や動きなどの情報を統合するタイミングをアルファ波が決めていることも示唆されている。同研究グループは今後、アルファ波の周波数を変調する技術を応用することで、短期記憶などの認知機能のパフォーマンス向上につなげられる可能性があると説明している。