IBMチューリッヒ研究所とソニーストレージメディアソリューションズは、磁気テープによる面記録密度で201Gb(ギガビット)/平方インチを達成し、世界最高値を更新したと発表した。従来比20倍の記録密度となる。研究成果は8月2〜4日、つくば市で開催された第28回磁気記録国際会議(TMRC2017)で発表された。

「磁気テープ」と聞くと、昔のビデオテープなどを思い浮かべて旧式の技術というイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし実際には現在も、データセンタにおけるバックアップやアーカイブ用途などでは、磁気テープが現役で利用されている。半導体メモリやハードディスクと比較するとデータ容量あたりのコストが格段に低いため、頻繁にアクセスする必要のない大量のデータを保存するには、今でも磁気テープを使うのが最も経済的で効率が良いためである。ビッグデータやクラウドコンピューティングといった新たな用途でも、同様の理由から磁気テープが利用されるようになっている。

今回報告された面記録密度201Gb/平方インチの磁気テープを用いたデータカートリッジは、1巻で約330TB(テラバイト)というデータ容量となる。従来のデータカートリッジ1巻あたりの容量15TB(IBMの現行テープドライブの最新製品「TS1155」の場合)と比較して、約20倍の大容量化が実現できることになる。

磁気テープ技術についてはソニーが開発し、記録・再生用磁気ヘッドおよびサーボ制御技術、信号処理アルゴリズムなどをIBMが開発した。

磁気テープの高密度化を進めるためには、磁気テープと磁気ヘッドの間の距離を狭く取る必要があるが、距離を狭くするとテープ表面と磁気ヘッドの接点摩擦が上昇しやすくなるという問題がある。今回ソニーが開発した磁気テープでは、テープ表面と磁気ヘッドの間に塗布する潤滑剤に新たなものを使うことによって、低摩擦特性と高耐久性という二つの特性を実現したという。

また、製造装置から発生する不純物ガスの影響によって磁性膜の結晶配向の乱れや大きさのばらつきが生じるという問題があり、これまでは高品質なテープを長尺で作製することが難しかった。今回は、不純物ガスの発生を抑える新たなプロセス技術を開発し、磁性粒子の大きさが平均7nmに揃ったナノ・グレイン磁性膜をスパッタ法によって長尺成膜できるようにした。これによって、テープ長1000m超を必要とするカートリッジ製造プロセスの基礎技術が確立できたとしている。

IBMでは、データチャンネル向けに、ノイズ予測検知原理にもとづく信号処理アルゴリズムを新規開発した。このアルゴリズムに加えて、極狭48nm幅のトンネル磁気抵抗(TMR)ヘッドを用いることで、線密度81万8000ビット/インチでの信頼性の高い動作が可能になる。

さらに、サーボ制御技術の改良によってヘッドの位置決め精度は誤差7nm以下となっており、これを幅48nmのTMRヘッドと組み合わせることで、1インチあたり24万6200本というトラック密度が可能になるとしている。これはIBMの既存のテープドライブの最新製品(TS1155)の13倍のトラック密度に相当している。