理化学研究所(以下、理研)は、患者の骨の内部を含む欠損部位の形状を再現した「人工骨」を「3Dプリンタ」技術により製造する手法を開発したと発表した。同研究成果は、骨に関わる疾患の早期治療や患者の生活の質(QOL)向上に貢献することが期待できるという。

同研究は、理研光量子工学研究センター画像情報処理研究チームの大山慎太郎客員研究員、辻村有紀テクニカルスタッフI、横田秀夫チームリーダー、技術基盤支援チームの山澤建二副チームリーダー、リコーの渡邉政樹スペシャリストの共同研究グループによるもので、同研究成果は、4月11日および13日付けで、米国アトランタで開催された「Society For Biomaterials’ 2018 Annual Meeting」にて発表が行われた。

欠損骨への治療には「人工骨」が頻用されており、近年、手関節や手指、足根骨部などの部位に使用できる精密な形状と高い強度を両立する「3Dプリンタ」による人工骨造形が注目を集めている。理研は2003年に、3DプリンタによるBJ(Binder Jetting)方式で、リン酸カルシウム系粉末材料を用いた人工骨の造形に成功している。しかし、この人工骨を作製するためには、所望形状を作製後、力学的強度を向上させるために、一定時間水和反応を行なう後処理工程が必須となっている。また、作製された人工骨の最小孔径は2mm程度で、力学的強度もあまり高くなく、骨置換性も乏しいといった課題があった。

同研究チームは、BJ方式をベースに、インクジェットヘッドや材料を改良することで、3Dプリントしてすぐに使え、高強度で骨置換性を持つ3次元造形人工骨の造形に挑戦した。このBJ方式では、α-リン酸三カルシウム(α-CTP)の粉末層を作製した後、キレート剤のエチドロン酸などの各種材料が調合された凝固インクを、リコー製の試作機を用いて粉末層上に塗布することで造形する。今回の人工骨では、一層あたり150μmで積層が行われた。この人工骨は、凝固インク塗布後数秒で十分に硬化し、相対密度が60%でありながら圧縮強度として、自家骨と同等レベルの強度25〜30MPaを実現した。さらに、細胞が好適に侵入することが可能な200μm程度の穴を空けることや、さまざまな形状で造形することもできる。そのほか、作製した造形物は、数分程度水洗するだけで細胞が増殖できる状態となり、焼成も必要としないという利点があるという。

また、安全性と骨組織との関係を調べるため、この人工骨上に蛍光標識した細胞をまき、培養して増殖の様子を観察した結果、人工骨上でも細胞の増殖が観察され、安全性に問題ないことが確認された。次に、人工骨をラットに移植したところ、異物反応などの有害事象はみられず、速やかに本来の骨組織に入れ替わることがわかった。

骨はそれ自体が受ける外力により、不要な部分の骨が消失して必要な骨を作るリモデリングにより、その環境に適応した形状に変化するが、同手法により、骨の持つリモデリング機能をいち早く回復することができるという。また、骨髄の移動を妨げることが少なく、内部を支える骨梁を反映した人工骨は、欠損する前の骨の形状を再現できることから、オーダーメード医療のための3Dプリンタとしての展開が期待できるということだ。