京都大学(京大)は9月17日、複数種の微生物と植物が共生することによって、1種の微生物のみが共生するときに比べて、植物の成長に複雑な反応が現れることを、膨大な実験データとともに明らかにしたと発表した。

同成果は、京大 生態学研究センターの堀淑恵大学院生(研究当時)、同・藤田博昭 大学院生、同・東樹宏和准教授らの研究チームによるもの。詳細は、「Frontiers in Microbiology」に掲載された。

1つの森林や草原、畑の土壌中には、数千種から数万種の細菌類や真菌類が生息していると推定されており、それらは植物の根の表面や植物組織の中で、植物と密接に関わり合いを持っていることがわかっている。

特に真菌類は、土中に菌糸を張り巡らせることで、植物に窒素やリンといった養分を輸送したり、土壌中の有機物を植物に利用しやすいよう変換したり、病原菌から防御したり、乾燥や高温ストレスに対する植物の耐性を高めたりといったような多様な役割を果たすようになる。

これまで、植物と真菌類の共生系に関しては、4億年以上前から陸上植物と共生する「アーバスキュラー菌根菌」や、ブナ科・マツ科といった樹木と共生する「外生菌根菌」などを主な対象として研究が進められてきたが、大量DNA配列分析装置を用いた近年の研究から、菌根菌以外にも、植物の根圏内に多様な真菌類が共生しており、何らかの役割を担っていることが見えてきたという。ちなみにこれらの多様な真菌類は、「内生菌」や「土壌菌」などと総称されているが、実はその全容はまだわかっていないという。

複数の微生物種が植物に共生した際に何が起こるのかという研究は、単純な2種の微生物と植物の関係性に関する研究でさえ、限定的な知見しか得られていないとする。そこで研究チームは今回、植物の根から単離された13種の真菌類(「内生菌」や「土壌菌」)を用いて、1種だけ植物に接種させた場合と、2種を組み合わせて接種させた場合で、植物が示す反応の比較を実施したという。

具体的には、2種の組み合わせの効果を、網羅的にコマツナに接種することで明らかにするという実験を実施。その組み合わせは78通りあり、合計で2000個体以上のコマツナが使われる生育実験となったという。

その結果、菌を1種だけ接種させた場合、13種のうち半数ほどが非接種の場合に比べて、コマツナの成長を明瞭に促進させる効果を示すことが確認されたとするが、そうした明瞭な成長促進効果を持つ菌同士を組み合わせてコマツナに接種させた場合、それぞれを1種だけコマツナに接種させた場合に比べ、成長促進効果が小さくなってしまう相殺効果が確認されたという。また、その一方で、単独接種ではコマツナに対する効果がほとんど見られなかった菌にも関わらず、それらを2種組み合わせて接種させたところ、相乗効果が発現。どの菌を単独接種しても得られないような、成長促進効果を示す組み合わせがあることが判明。こうした相乗効果は、実験を行った78通りの組み合わせのうち、数通りで確認することができたという。

これらの成果を受けて研究チームでは、「共生者が複数いる場合の効果は、1種しか共生者がいない場合の知見だけでは予測できないのが普通」ということが明らかとなったとするほか、これまで植物にとって有用な微生物を開発する際には、1種だけを植物に接種させる実験を通して評価が行われてきたが、そのような開発戦略では、2種以上が存在する条件下で重要な機能を発揮する微生物を見落としてしまう可能性があることも示唆されたとしており、1種ずつ見るのではなく、「チームとしての微生物たちのパフォーマンス」を最大化するための科学的アプローチが、今後は重要になってくるとしている。

そのため研究チームでは、今後はこうした観点で、生物種同士の関係性を「ネットワーク」として捉え、そのネットワーク構造を俯瞰することで、最適な微生物種の組み合わせを設計する試みを今後も進めていくとしている。