県登山安全条例の全面施行に伴い、昨年7月から登山計画書(登山届)の提出が義務化され1年余りが経過した。12月まで半年間の提出件数は13万4204件で、前年同時期に比べ3割以上増加。上伊那地方の山岳関係者は「提出意識は高まっている」と証言する。一方で、初心者を中心に「浸透しきっていない」(警察関係者)との受け止めもあり、関係機関・団体は国民の祝日「山の日」の11日を中心に、改めて周知を図っていく考えだ。

 遭難の恐れが高いとされる県内山岳の登山道(指定登山道)を通行する際に提出を義務付けた。発生した場合に迅速な救助活動につながることに加え、自分が登ろうとする山の特性を事前に知り、十分な準備を促す狙いがある。

 県によると、半年間の総数のうち、県が受け付けたのは12万2096件で、残りは日本山岳ガイド協会が提供するオンライン届け出システムなどが利用された。前年同期の県受け付けは9万件余。登山者数の違いもあって一概に比較できないが、伸び率は35・6%となった。

 7〜9月に比べて10〜12月の伸び率が高く、次第に浸透してきた印象も。駒峰山岳会代表で中ア遭対協登山相談員の後藤寛さん(67)=宮田村=は「秋になるときちんと書く人が多くなった」と振り返り、今夏については「さらに意識が高まり、(中ア)千畳敷でも提出者が増えている印象だ」。計画書づくりは「自分が行こうとする山の勉強になる」と意義を語り、安全登山へ「いい方向ができつつある」との見方を示す。

 遭難例でみると「義務化前後で提出状況はあまり変わっていない」との声がある。駒ケ根署によると、昨年7月〜6月に管内の中アで発生した10件の遭難のうち、死者・行方不明者が出た4件を含め6件は未提出だった。「初心者や県外者への周知が課題」と指摘する。一伊那署管内の南ア・中アで昨年7月〜1月に起きた8件のうち、1件は不明で1件が未提出だった。

 中ア遭対協は、駒ケ根市の菅の台に11日から開設する登山相談所で登山届の提出も呼び掛けていく考え。県上伊那地域振興局は、登山者に提出の有無を直接聞き取る活動を8月にも予定しており、「定着に向けて地道な呼び掛けを続けたい」としている。