今夏、中央アルプスで生まれた国特別天然記念物のニホンライチョウのひな3匹が、長野市茶臼山動物園ですくすくと育っている。半世紀前にライチョウが絶滅したとされる中アで環境省が取り組む「復活作戦」の一環で、ひなたちは母鳥とともに同園で8月から過ごしている。来夏にはひなが親となり、同園生まれのひなと中アに里帰りする予定だ。

 ライチョウは今夏、中アで半世紀ぶりに自然繁殖し、10家族50羽以上のひなを確認。環境省はこのうち5家族をケージで保護し、ひなの成長を見守った。8月3日には、茶臼山動物園に母鳥とひな3羽(雄1、雌2)の計4羽、栃木県の那須どうぶつ王国に母鳥とひな6羽(雄2、雌4)の計7羽をそれぞれヘリコプターで移送した。

 茶臼山動物園ではまだ一般公開はしていないが、飼育舎内で散歩している様子が確認できる。ひなたちの体重は移送時は150グラムほどだったが、現在は400グラムを超え、母鳥と同じ大きさの若鳥になった。しかし、「ピヨピヨ」と鳴いたり、落ち着きがないで駆け回ったりと、幼い姿がまだ見られる。コマツナやリンゴ、人工飼料などをよく食べている。

 家族7羽を受け入れた那須どうぶつ王国でも、ひなは順調に育っている。しかし13日朝、飼育室内で横になって動けずにいる母鳥が見つかり、その後、死亡が確認された。前日夜に突然激しく飛び回る様子がカメラに記録されていたが、原因は不明。残されたひなの健康状態は良好で、落ち着きを取り戻しているという。

 復活作戦は、中アでのライチョウの個体群復活のため、自然環境下での保護・繁殖を行うとともに、野生個体を動物園で繁殖させ、その後再び中アに戻す試み。

 ライチョウは、ひなが成鳥になるまでの約3カ月間、ひなは母鳥と一緒に生活をして、生きる知恵を学ぶほか、母鳥の盲腸糞を食べて餌の高山植物の消化に必要な腸内細菌や寄生虫への耐性を獲得する。しかし、飼育下のほかのライチョウは、卵を移送して人の手でふ化した個体のため腸内細菌などを持っておらず、野生復帰は困難。このため、野生家族を動物園に導入し、繁殖させる必要がある。

 ひなが成鳥となった今冬には、近親交配を避けるため、両園の雄個体の交換が行われる。中村浩志信州大学名誉教授は「来春の繁殖が成功するよう取り組んでいきたい」としている。