「世界のトヨタ」が新たな挑戦を続けています。環境に負荷をかけない“夢の燃料”を使ってカーレースに参戦しています。週末には鈴鹿サーキットで3戦目。そこには豊田章男社長の脱炭素社会に向けた自動車業界全体を見据えた戦略がありました。

豊田章男社長自ら「水素エンジンカー」進める理由

 市販の車を改造したレースカーでサーキットを駆け抜けるレース「スーパー耐久シリーズ」。レースの中盤、ピットインしてきたのは、トヨタ自動車の『カローラスポーツ』です。

「ピットで補給している燃料は、ガソリンではなく水素です」(記者)

 燃えやすい性質で、燃やしても水しか排出されない水素は、脱炭素社会に向けた“夢の燃料”と言われています。

 トヨタはこれまでに、水素と酸素を反応させて発電しモーターを回す燃料電池車の『MIRAI』を販売してきました。一方、レースに出場した『カローラスポーツ』は、ガソリンの代わりに水素そのものを燃やしてピストンを動かす仕組みです。

 トヨタによると、水素は燃えるスピードが早く、ガソリン車よりも加速したときの反応が良いそうです。
 
 水素エンジンでレースに挑む。世界初というチャレンジは、豊田章男社長が自ら推し進めてきました。

「水素エンジンカーでの参戦は、カーボンニュートラル(脱炭素社会)時代において選択肢を広げていくことに尽きる。経営者としては、流行りの電気自動車にシフトするというのは楽。メディアの皆さんからも責められないし、楽に決まっているんですよ。でも、私には550万人の仕事と生活を守るミッションがあると思っている」(トヨタ自動車 豊田章男社長)

ガソリン車に構造近い水素エンジン車で自動車業界の雇用を守る

レースに参戦中のカローラスポーツ(18日 鈴鹿サーキット)

 世界的な「脱炭素」の流れで、ガソリンエンジンに対する風当たりが強まる中、構造がほぼ同じ水素エンジンを取り入れることで、自動車業界の雇用を守れるという豊田社長。

 車への利用を通じて、エネルギー源として水素が抱える課題も明確になります。

「水素を『つくる』『運ぶ』『使う』でいくと、今回、鈴鹿第3戦においては、『運ぶと作る』(の挑戦)」(豊田章男社長)

 『水素は正しく管理すれば、安全に利用できる』というトヨタ。今回のレースで使う水素は福島県内で作られたものに加え、オーストラリアで作られた水素を、川崎重工などが空輸しました。

「一戦一戦積み重ねることで、こうして仲間が増えていくこと、意志ある情熱をもった行動が仲間づくりにつながっている」(豊田章男社長)

3戦目の挑戦で水素充填にかかる時間を5分から2分に「カイゼン」

移動式の水素ステーションで補給するカローラスポーツ(18日 鈴鹿サーキット)

 サーキットでは、移動式の水素ステーションとなったトラックが、ピットから少し離れた場所に設置され、カローラに水素を補給します。

 水素の力を、レースで証明する。期待を背負ったエンジンが積まれたのは、トヨタの代名詞とも言えるカローラ。5月に富士スピードウェイで行われた、24時間耐久レースでデビューを飾り、8月には大分県内でレースに参戦しました。 

 3度目の挑戦となった今回の鈴鹿サーキット。初日の18日は、台風14号の影響が心配されましたが、午後には雨も止み、晴れ間がのぞく中でのスタートとなりました。

 ガソリン車に交じり、エンジン音を響かせながら快調な走りを見せる水素カローラ。

「ひょっとすると、日の目を見なかったこの技術たちが、こうしてですね、何か自分たちにも可能性があるんじゃないかとか、そういう動きになっていたんじゃないのかなというふうに思います」(豊田章男社長)

 これまでのレースを通じて、ガソリンエンジン並みのパワーを出せるようになった水素エンジン。およそ30分に一回、水素を補給します。補給にかかる時間は、初戦では約5分かかっていましたが、今回は2分ほどに短縮できました。 

「新しい挑戦で新しいレガシーへの変革を」

自らハンドルを握った豊田章男社長(18日 鈴鹿サーキット)

 5時間もの間、走り続ける過酷な耐久レース。途中、電子系統にトラブルが出る場面もありましたが、最後には、豊田社長自身が“レーサー・モリゾウ”としてハンドルを握り、2日間、無事に完走しました。

 トヨタは、こうしたレースなどを通して「カイゼン」が必要な技術的な課題などをみつけ、新たな市販車の開発や、脱炭素社会の実現につなげる考えです。

「このレース参戦をきっかけに、まだまだこういう可能性もあるよねという形ができた。しかもそれが、エネルギーを作るというところでも、多くの仲間たちが自発的に参加をいただいている。これこそが大きな動きなんじゃないのかなと思います」

「みんなでカーボンニュートラルを実現していくっていうことが必要ですし、私どもはそういう行動を示すことで、自動車産業に関わる550万人の仕事と生活を守っていきたい」

「こういう新しいものに挑戦することになり、新しいレガシーへ変革していくんじゃないのかなというふうに感じております」(豊田章男社長)

(9月20日 15:40〜放送メ〜テレ『アップ!』より)