「ニューメキシコ州には、数え切れないほどの化石があります」。ニューメキシコ自然史科学博物館の学芸員で、古生物学を専門とするスペンサー・ルーカス氏は、2016年11月に米国ニューメキシコ州ラスクルーセス近郊の砂漠で発見された化石について、こうコメントした。

 当時9歳だったジュード・スパークスさんは、両親と兄弟3人でオーガン山脈を散策しているとき、地面から突き出している何かにつまづいた。ジュードさんはテキサス州エルパソにあるABC系列局「KVIA」のインタビューで、すぐに弟のハンターさんに話したと振り返っている。

「ハンターはただの巨大な腐ったウシだと言ったけれど、僕には何だかわからなかった。ただ、普通の動物ではないと思った」

 実際、それは巨大な腐ったウシではなく「ステゴマストドン」だった。約120万年前に生きていた原始的な哺乳類だ(ゴンフォテリウム科。古代のマンモスや現代のゾウの遠戚にあたる)。

 その夜、ジュードさんの両親はニューメキシコ州立大学の教授ピーター・ウーデ氏に連絡した。過去のインタビューを発見し、専門家に違いないと思ったためだ。ウーデ氏とスパークス一家は現地を訪れ、ジュードさんがつまづいたのは頭蓋骨であることを確認した。

 資金調達、ボランティア集め、スケジュール調整の後、ウーデ氏のチームとスパークス一家は再び現地を訪れ、発掘作業を開始した。そして、慎重な作業の末、今にも壊れそうな化石を掘り出すことに成功した。発掘の1週間後、ウーデ氏はナショナル ジオグラフィックに「卵の殻くらいの薄さ」と語っている。

 ウーデ氏はこの化石を展示したいと考えている。

ステゴマストドンの化石は希少

 ニューメキシコ州でステゴマストドンが発見されたのはこれが初めてではない。2014年には、大学生のグループがほぼ完全な化石に遭遇し、ニューメキシコ自然史科学博物館が回収している。

 ただし、ステゴマストドンの化石は希少なものとみなされている。ルーカス氏によれば、北米大陸の西側では、マンモスなどの化石は比較的多く見つかっている。だが、なぜかステゴマストドンの化石はあまり発見されない。全世界でもわずか数百ほどだと、ルーカス氏は話す。

 ステゴマストドンの絶滅とマンモスの到来は相関しているという説もある。ルーカス氏は、ステゴマストドンはマンモスに敗れ去ったと考えている。どちらも草を食べて生きていたため、資源を奪い合っていた可能性があるのだ。

 一方、ウーデ氏は、ステゴマストドンが絶滅した原因は気候変動だったという説を唱えている。「彼らが生きていた時代の気候は、より湿度が高く低温でした。今のラスクルーセスは砂漠ですが」

 ラスクルーセスの砂漠にどれくらいの化石が埋まっているかはわからないが、米国で化石が見つかるとしたら、南西部である可能性は高い。南西部の乾燥した気候と岩石の多い地形は、動物の骨が何百万年も状態を維持するのに適しているのだ。

 スパークス一家は地元ニュースのインタビューで、直前に雨の日が続いていたため、化石が露出したのかもしれないと語っている。

 ルーカス氏もその可能性は十分あると同意する。雨は堆積物を浸食するため、発見の確率が高まるという。「古生物学者にとって、浸食は親友のようなものです」