今世紀中にグリーンランドの氷床(地表を覆う氷の塊で規模の大きいもの)の融解は、完新世が始まって以来、例のない速さで進むようになる。そんな警戒すべき予測が、最新の研究で明らかになった。完新世とは、人類の文明が発展したこの1万2000年間のことだ。

 9月30日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された論文は、グリーンランドの氷床が急速に減る時期に入っていることを、最新の証拠に基づいて明らかにした。グリーンランドの氷床には、全て解ければ地球の海面を約7.4メートル上昇させるだけの水がある。人類が現在のペースで化石燃料を燃やし続ければ、氷床が完全に融解してしまう可能性があるという。

 また、過去と比べても現在の融解がいかに速いかを示し、近年のグリーンランドの氷床融解を自然のサイクルの一部と見なす考えを否定した。

「過去1万2000年に及ぶ自然な変動を考慮しても、今世紀は過去に例のない特異な時代になることを確信しています」。論文の筆頭著者で、米ニューヨーク州立大学バッファロー校の雪氷学者であるジェイソン・ブライナー氏はこう述べている。

過去と未来をつなぎ合わせる

 過去40年間、北極の温暖化の影響を受け、グリーンランドの氷床は加速度的なペースで減ってきた。だが、この傾向を長期的な視点でとらえるためには、数千年分の氷床の成長と後退の記録が必要となる。

 かねてから科学者たちは、完新世におけるグリーンランドの氷床量の変化を知ろうと試みてきた。その際、過去の気温の目安として一般的に用いられるのは、氷床コア内部の「酸素18」という同位体(普通の酸素より重い酸素原子)だ。

 だが、こうした分析の大半では、1つの氷床コア(氷床を掘削して採取した柱状の試料)だけからグリーンランド全体の気候状況を推定していたため、不確実さがつきまとっていた。また今までの研究では、グリーンランドの過去の再現モデルと、今世紀に融解する氷床の量の予測をつなぎ合わせてこなかった。

「グリーンランドの氷床の過去をモデル化した研究も、未来をモデル化した研究もありました」とブライナー氏は言う。「しかし、過去から未来までの全体像を、一貫して同じモデル、同じ手法を用いて推定した研究はありませんでした」

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