米国の環境保護局(EPA)が2020年10月に発表した海洋ごみ対策の計画では、アジアの5カ国が名指しされた。毎年、海に流出しているプラスチックごみの半分以上が、中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムからのものだというのだ。

「米国には世界で最も美しい砂浜や海、そして素晴らしい海岸線があります」。計画書の最初のページには、トランプ氏の言葉が大きな文字で印刷されている。「私はこれからも大統領として、我が国の海を他国のごみの埋め立て地にさせないよう、できる限りのことをします」

 科学者たちによれば、この表現には問題がある。プラスチック問題の複雑さを歪曲(わいきょく)しているうえ、海洋ごみはアジアの問題であるという米国の独りよがりな認識を広めることにつながるからだ。

 一方、10月30日付けで学術誌「Science Advances」に掲載された論文は、プラスチック消費国としての米国のあり方を改めて検証、廃棄物の管理について米国はまだまだやるべきことがあると結論付けている。

 論文によると、プラスチックの生産量では確かに中国が最大だが、排出量では米国が4200万トン(2016年)と圧倒的に最大だ。さらに、沿岸部で適正に処理されず廃棄されるプラスチックごみの量においても、世界で3番目に多いと推定している。

 米国はプラスチックごみの90%を埋め立てたり焼却しており、リサイクルしているのは10%に達しない。そしてリサイクル可能なプラスチックごみの半分を、30年もの間、海外に輸出してきた。輸出先は中国のほか、ごみ処理のためのインフラが整っていない発展途上国だったが、2018年に中国が国内の環境問題改善のために廃プラスチックの輸入を禁止したことで、輸出量は大幅に縮小した。

 問題の国際的解決を目指すうえで、他国を「名指しで非難」しても世界の団結に役立ったことはない。それが今回の研究を実施した理由の一つだと著者らは語る。

「考えてもみてください。私たちの国(米国)は沿岸部に大きな人口を抱えています。私たちは大量消費者であり、それには責任が伴います。アジア諸国に海への投棄をやめさせれば問題はすべて解決するという、ばかげた考えからは抜け出さなければなりません」と話すのは、論文の共著者であるテッド・シーグラー氏だ。経済学者であり、米国の環境コンサルティング会社、DSMエンバイロンメンタル・サービスの共同経営者でもある。

 米国のプラスチックごみに関する分析は、上記の研究だけではない。米科学アカデミーは、米国が海洋プラスチックごみ問題をどれだけ悪化させているかを調査中で、2020年10月に調査に関する初の公開会議を開催した。会議中、海洋ごみプログラムの主任科学者エイミー・アーリン氏は、「これは東南アジアだけの問題ではありません」と聴衆に語った。

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