気候変動によってハリケーンの上陸後の寿命が延び、内陸部の被害がさらに広がる可能性があることが、新たな研究で明らかになった。気候変動がハリケーンの勢力を強める可能性については、多くの研究で示されてきたが、これは温暖化とその衰退との関連を明確に示した初の研究だ。

 11月11日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された論文では、1967年から2018年までに北米を襲ったハリケーンが分析された。その結果、1960年代のハリケーンは、上陸後1日で勢力を75%失っていたのに対し、現在では通常、約50%しか勢力を失わないことがわかった。すなわち、勢力が弱まる速さは2倍も遅くなっている。

 2020年はハリケーンが記録的に多く、これまでに名前のついたハリケーンが29個も発生した。ハリケーンシーズンが正式に終わる11月30日までにはまだ日があるものの、メキシコ湾岸はすでに数十億ドル(数千億円)規模の被害を受けている。11月に入ってからもカテゴリー4のハリケーン「エータ」が中米で猛威をふるい、その後、熱帯低気圧となって米フロリダ州にも上陸した。

 沿岸地域は強まる暴風雨への対応力を高めつつあるが、今後は上陸地点から遠く離れた内陸部も大きな影響を受けるようになる可能性を、今回の研究は示唆している。

 論文の著者らによると、海水温の上昇がハリケーンの寿命を延ばしているという。人為的な要因による地球温暖化が続けば、ハリケーンによる被害は内陸部まで広がり、暴風雨への備えができていない地域に甚大な被害をもたらす可能性がある。

 研究グループによると、上陸したハリケーンの長寿命化と海水温の上昇との間に関連が見つかったのは偶然だったという。

「私たちは上陸後のハリケーンの変化をシミュレーションしていたのですが、現在普及しているモデルでは説明できない特徴が繰り返し見つかったのです」と沖縄科学技術大学院大学(OIST)の流体力学ユニットを率いるピナキ・チャクラボルティ教授は話す。

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