自分にとって特別な相手に出会ったら、だれでも離れがたいものだ。同じように、自然界にもいとしい相手にぴったり寄り添う動物たちがいる。ともに過ごすのはほんの一瞬だったり、数時間だったり、なかには死ぬまで離れない動物もいる。

 動物界では、このような「寄り添う」行動は繁殖の成功をもたらす。ロマンチックな両生類の抱擁から、合体・融合してしまう深海魚まで、バレンタインデーにふさわしい睦まじく寄り添うカップルたちを紹介しよう。

一体化してしまう深海アンコウ

 水深2000メートル近い深海に暮らしていると、相手に出会うのも簡単ではない。そこで、ヒレナガチョウチンアンコウの一種のオスは、メスを逃さないために思い切った手段に出る。メスにかみついて離さないのだ。

 恋する二匹のアンコウの体はやがて融合し、循環系までひとつになる。2018年3月のナショナル ジオグラフィックの記事にあるように「オスは目やひれ、歯、ほとんどの内臓を失い、メスが産卵できるタイミングに備える精子バンクと化す」

 この融合でオスが得るものは何だろうか。それは、子孫にオスの遺伝子が継承されること、そして、オスが生存できる最小限の栄養をメスが与えてくれることだ。アンコウ目の一部の種では、メスが複数のオスを同時に寄生させ、そのすべてと交配することがある。

メスに群がって求愛するヘビ

 カナダのマニトバ州の固有種であるガーターヘビの一種(Thamnophis sirtalis parietalis)のメスは、相手探しに困ることがない。オーストラリア、ウーロンゴン大学のクリストファー・フリーゼン氏によれば、10匹から30匹ものひたむきなオスがいっせいに求愛し、文字通りメスを愛情で包みこむという。

 春に冬眠から目覚めたオスは、求愛のシーズンを迎えている。交尾を求めるオスは、冬眠から遅く目覚めるメスを、餌も食べずに我慢強く待ち受ける。2〜4週間も待ち続けてようやくメスが姿を現すと、求愛で頭がいっぱいのオスたちが一匹のメスを包みこみ、いわゆる「交尾玉」を形成する。

 フリーゼン氏の話では、この状態が15分ほど続き、交尾を遂げた幸運な一匹のオスが、他のオスを寄せ付けないようにゼリー状の栓(交尾栓)をメスに挿入する。交尾を終えたメスは、交尾玉から滑り出て、近くの湿地帯に餌を探しに出かける。

 オスのガーターヘビは懸命に求愛するが、引き下がる潮時もわかっている。「交尾の過程で、求愛の激しさとオスの数はやや減少します。そして、メスが自分以外と交尾したことを察知したオスたちは、また他のメスを探し始めます」とフリーゼン氏は話す。

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