重症度別の対応が必要

 ヘパリンなどの血液抗凝固剤を用いた治療法も注目されている。この治療法では、新型コロナ感染症に伴う血栓のリスクを低下させ、患者の状態悪化を防ぐ効果が期待されている。

 NIHの米国立心肺血液研究所は1月22日、入院した1000人以上の中等度の患者について、抗凝固剤を投与することで人工呼吸器が必要となるリスクが低下したと発表した。だが、12月に発表した試験結果にも触れ、重症化した患者には抗凝固剤は効果がないだけでなく症状が悪化することもあると強調した。

「これは、臨床試験において患者を重症度別に分類することがいかに重要かを示す良い例です。ある(重症度の)グループでは効果があっても、別のグループでは効果がなかったり有害だったりすることがあるのです」。NIHのフランシス・コリンズ所長は、抗凝固剤の試験結果について、ブログ「NIH Director’s Blog」の2月2日付けの投稿でそう述べている(編注:日本では血栓のリスクがある場合にヘパリンなどによる抗凝固療法を推奨)。

 なかには、軽症患者が入院の必要な段階まで悪化しないようにすることに焦点を当てている研究もある。例えばカナダのモントリオール心臓研究所による「COLCORONA」試験では、抗炎症薬コルヒチンの効果を調査している。コルヒチンは、痛風や一部の心疾患の治療に広く使用されている薬だ。

 ニュースリリースおよび1月27日付けで「medRxiv」に発表した論文によれば、COLCORONAの研究者たちは、新型コロナ感染症の軽症の在宅患者4488人を対象に試験を行った。その結果、コルヒチンを投与された患者群は、投与されなかった患者群と比較して入院または死亡のリスクが21%ほど低かったという。  

 だが臨床医たちは、コルヒチンの効果に対して疑念を抱いている。というのも、この論文の主な主張である「21%の減少」が、少人数の患者群に基づいているからだ。この試験では全体的に致死率と入院率が低かったので、1人の死亡や入院が結果を大きく左右する。対象となった4488人のうち、入院または死亡したのはわずか235人。そのうち104人がコルヒチンを投与され、131人は投与されていなかった。

 また、コルヒチンが致死率を低下させたかどうかも明確ではない。PCR検査で陽性と確認されていた4159人のうち、死亡者の数は、コルヒチンを投与された患者群では5人、コルヒチンを投与されなかった患者群では9人だった。

 2月上旬のカナダ放送協会(CBC)の報道によれば、ケベック州の臨床研究機関INESSSは、「新型コロナ感染症と診断された在宅患者へのコルヒチンの投与は、今の段階では支持できない」と述べた。

 一方、コルヒチンが中等症から重症の新型コロナ入院患者に効果があるかどうか調査を始めた研究者もいる。ランドレー氏によれば、RECOVERY試験でも、アスピリン、バリシチニブ、2020年秋にトランプ前大統領の治療にも使われた抗体カクテル療法に加え、コルヒチンも試験の対象にするという。

 それでも、短期間で新型コロナの致死率を低下させる効果が最も大きいのは、治療薬ではなくワクチン接種だと専門家は力説する。現在、ワクチン接種は米国内や世界中で進められており、承認済みのすべてのワクチンには生命が脅かされる事態を防ぐ高い効果が確認されている。

「新型コロナウイルスは人類に適応して変化しています。でも幸いなことに、私たちも知恵を絞って科学技術を駆使し、相当なスピードでこのウイルスに適応しています」とビムラージ氏は言う。