米国のアイダホ州議会は、州内に生息するオオカミの大部分を駆除することを目的とした法案(上院法案1211)を可決した。これによりオオカミの狩猟に関するほとんどの制限が取り除かれる。オオカミ猟を大幅に拡大するこの法案に対しては、科学者や自然保護団体のみならず、狩猟を推進する団体からも怒りの声が上がっている。

 共和党のブラッド・リトル知事によって5月5日に署名され、成立したこの法律は、数カ月以内に施行される予定だ。施行後は同州に約1500頭いるオオカミの90%以上をハンターや民間業者が駆除できることになる。法案は、オオカミが米国の絶滅危惧種法による保護対象から除外されたわずか数カ月後に可決された。

 アイダホ州では何十年にもわたり、オオカミを回復させるための熱心な取り組みが行われてきた。その努力が無に帰す可能性がある。

賞金稼ぎシステムへの逆戻り

 同法案は、ほとんどの民主党員は反対したものの、多数の共和党員の支持を得て可決した。上院では4月21日に26対7で可決、下院では4月27日に58対11で可決している。

 この法律により、家畜やシカに害を与えると考えられているオオカミを、飛行機やヘリコプター、ATV(四輪バギー)、スノーモービルなどからの射撃を含む、あらゆる方法で狩猟することができるようになる。餌や照明を使った夜間の狩猟も許可される。また、私有地内でのオオカミの捕獲やわな猟は年間を通じて可能で、全てのハンターは狩猟のためのタグを無制限に購入することができる。

 エルク(大型のシカ、アメリカアカシカとも)を捕食するオオカミの殺処分のための州資金が、年間19万ドル増の30万ドル(約3300万円)となる。この他に、州は家畜を襲うオオカミを駆除するために50万ドル(約5400万円)以上を計上している。資金の一部はオオカミ猟にかかった費用の償還として、個人に支払われる。この法案に反対する多くの人はこれを、20世紀初頭に米国本土48州からオオカミをほぼ絶滅させてしまった賞金稼ぎシステムへの逆戻りととらえている。

 法案には、アイダホ州魚類狩猟局や非営利団体「アイダホ・スポーツメン」など、伝統的に狩猟を支持してきた多くの団体が反対した。

「馬鹿げています」と、元野生動物管理者で捕食動物の管理に詳しいカーター・ニーマイヤー氏は語る。「私に言わせれば、正当化できる理由がありません。時代に逆行しています」

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