米国南部、アラバマ州にあるディズマルズキャニオンは、みずみずしい緑の苔に覆われた岩の迷宮だ。ただし、この渓谷に秘められた魔法は、昼の光の中では見ることができない。太陽が沈んで夜になると、通称「ディズマライト」と呼ばれる小さな幼虫たちが青い光を放つ。

 ディズマルズキャニオンは、光る幼虫が大量に生息する、米国では数少ない場所のひとつだが、国立や州立の公園ではないことからこの場所について知らない人も多い。

「1920〜30年代以降、地元では人気の観光地ですが、昔も今も私有地であるため、大々的に宣伝されたことがないのです」と、米オーバーン大学の昆虫学名誉教授のゲイリー・ミューレン氏は言う。

 幼虫の数は、年に2回、卵からかえる晩春と初秋にもっとも多くなり、ホタルにも負けない光のショーを見せてくれる。しかし、気候変動は世界中の発光生物に影響を及ぼしており、ディズマライトに残された時間も、あるいはそう長くはないのかもしれない。

ディズマライトとはなにか

 ディズマライトは、学名Orfelia fultoni(オルフェリア・フルトニ)という北米固有のキノコバエの幼虫だ。

 ニュージーランドやオーストラリアで見られるツチボタルの親戚で、苔むして湿った渓谷の壁にすんでいる。獲物を捕らえるわなを仕掛け、頭部と尾部の両方から明るい青緑色の光を発して、蚊などの昆虫を引き寄せる。光を放つ方法はホタルに似ていると、ディズマルズキャニオンの専属生物学者ブリトニー・スラッピー=マキャフリー氏は言う。

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