オミクロン株の新たな系統によって、南アフリカでは再び新型コロナウイルス感染症の感染者数が急増している。研究からは、これらの系統は従来のオミクロン株とは大きく異なっており、過去の感染から得られた免疫による防御効果はさほど期待できないことがわかってきた。

「BA.4」「BA.5」と呼ばれる新たな系統は、互いに非常によく似ており、どちらも現在主流のオミクロン株BA.2系統よりも広まりやすい。南アフリカでは、1カ月足らずのうちにこれらの系統がBA.2から置き換わり、感染者数は4月半ばから3倍に増えた。

「ワクチンを接種していない人は、BA.4とBA.5に対する免疫がほぼ皆無の状態です」と、アフリカ保健研究所とクワズール・ナタール大学に所属する生物学者アレックス・シガル氏は言う。「重症化を防ぐ程度の免疫はあるかもしれませんが、感染から発症までを防ぐには足りないでしょう」

 南アフリカは、アフリカ諸国の中でも新型コロナによる被害がとくに大きな国だ。公式な死者数は10万人を超える。しかも、3月10日付けで医学誌「The Lancet」に発表された研究によると、実際の数は大幅に多いという。

 現在BA.4と BA.5が増加している同国では、死者の数がさらに増えることが予想される。同国でワクチン接種を済ませた人はわずか3人に1人であり、この割合はアフリカの他国と比べても低い。

 米国で今のところ支配的なのはBA.2.12.1と呼ばれる系統だ。米疾病対策センター(CDC)によると、先週はこの株によって新規入院者数が全国で17%以上、五大湖地域とワシントンD.C.周辺地域では28%も増加している。しかし、ウイルス情報のデータベース「GISAID」では、新たな系統は北米、アジア、ヨーロッパの20カ国以上に広がっており、米国でもすでにBA.4が19例、BA.5が6例見つかっている(編注:4月25日時点で日本では未検出)。

ほかのオミクロン株と何が違うのか

 南アフリカは、新型コロナウイルスの遺伝子配列解析を積極的に行ってきた。そうした迅速な解析が、2021年12月、BA.1と呼ばれる従来型オミクロン株の発見と急増を世界に向けて警告するうえで重要な役割を果たした。今回BA.4とBA.5を発見したのも、そのときと同じ解析チームだ。

「BA.4とBA.5が同定されたのは、ほかの多くの国々がやめてしまった遺伝子配列の解析を、今も南アフリカが続けているおかげです」。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は5月4日、記者会見でそう述べている。「多くの国々では、ウイルスがどのように変異しているのかが見えていません。次に何が起こるのか、われわれは知らないのです」

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