細菌と聞けば普通、顕微鏡でしか見えないほど小さな生物を思い浮かべるだろう。しかし、肉眼で容易に確認できるほど巨大な細菌が、カリブ海の小アンティル諸島にあるフランス領グアドループのマングローブ林で見つかった。この発見は6月23日付けで学術誌「サイエンス」に発表された。

 細菌の長さは最大2センチほどもあり、白い糸状で、汽水に沈んだ腐りかけの葉に付着していた。しかも、驚くべき特徴は大きさだけではない。既知のどの細菌よりも複雑な構造をもつうえ、他の大半の細菌とは違い、DNAを小さな袋に収納しているのだ。

 これまでに発見された細菌の中にも、シアノバクテリアなど長さ数センチの糸状になるものはあるにはあったが、それらは数百〜数千個の細胞でできている。しかし、今回発見された細菌の細胞の数は1つだ。「あのサイズの糸状の細菌がたった1個の細胞であることに気づいたときには、本当に驚きました」と、研究チームを率いた米ローレンス・バークレー国立研究所の海洋生物学者ジャンマリー・ボラン氏は、ナショナル ジオグラフィックのインタビューに答えている。

 この細菌は「チオマルガリータ・マグニフィカ(Thiomargarita magnifica)」と名付けられた。「チオマルガリータ」は、細胞内で硫黄が真珠のように連なっている様子から、「マグニフィカ」はその巨大さから来ている。T・マグニフィカは、典型的な細菌の1000倍以上の大きさをもつだけでなく、ショウジョウバエをはじめとする多くの多細胞動物より長い。ボラン氏は6月21日の記者会見で、この細菌の発見は「エベレスト並みの身長の人間に遭遇したようなものです」と説明した。

「この新しいチオマルガリータ属の細菌の発見が改めて教えてくれるのは、微生物の世界の驚異的な多様性です。それに、細菌の構造とゲノムがもつ、予想外の大きさまで成長できるような高度な適応能力です」と、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の海洋生物学者アンドレアス・テスケ氏は言う。

 オーストラリア、モナシュ大学の微生物学者クリス・グリーニング氏も、細菌が私たちの予想よりもはるかに複雑で組織化されていて、多才であることを示す発見だとしてボラン氏らを称賛し、「細菌は常に教科書の記述を覆し続けています」と話す。なお、テスケ氏とグリーニング氏は今回の論文には関与していない。

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