年間200本以上の映画やドラマを鑑賞するe-NAVITAスタッフのKが「こんなかたにおすすめ」「楽しむポイント」などのプチ情報も交えながら、おすすめの映画をご紹介するこの連載。


舞台はハリウッド!映画製作に携わる人が主人公の映画5選

 

今回は「舞台はハリウッド!映画製作に携わる人が主人公の映画5選」を紹介します。「映画製作がテーマの映画」のように、映画を製作する自分たちのことをそのまま物語にした作品があります。映画製作の苦労、映画史に残る偉人の伝記、物語の内容に対する規制など様々なテーマに富んでいるのが特徴です。そこで本記事では映画大国アメリカのハリウッドを舞台にした映画をセレクトしました。映画に関する豆知識も得られる面白いジャンルですので、映画ファンや舞台の裏側に興味をもたれたかたはぜひチェックしてみてください。紹介する映画はU-NEXT、Hulu、Amazonプライムビデオ、dTV、Netflixなどの各動画配信サイト(VOD)で配信されています。

 

1.「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」

偽名でアカデミー賞を2回受賞!?ハリウッドVS天才脚本家

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」は、「ローマの休日」などを手がけた天才脚本家ダルトン・トランボの伝記映画です。彼は誰もが認める名脚本家なのですが、ある時期にハリウッドから追放されることになってしまいました。それは1940年代後半から1950年代中期ごろにかけてアメリカで行われた「赤狩り」のせいです。東西冷戦の当時、アメリカは共産主義者を脅威と見なして社会的に追放しようとしていました。その運動はハリウッド内でも行われ、共産主義者であったトランボも最終的に刑務所に収監されることになったのです。やがて出所したあとに彼は偽名を使って脚本を書き、ダルトン・トランボとクレジットされていない名作を送り続け、アカデミー賞を2回受賞する偉業を成し遂げました。そのうちのひとつが「ローマの休日」でした。

ここがおもしろい!
ハリウッドから完全に干されて仕事がなくなったトランボが、どうやって晴れ舞台にまで返り咲いたのかが見どころです。ハリウッドで「赤狩り」を行っていた非米活動委員会は「共産主義者はアメリカ社会を乱す悪の映画を作る」という理由で迫害を行っていました。トランボはそれに対して、いい脚本を書くことで社会をよくすることができるという希望を持って筆を走らせ続けました。「どうだ、私が書いた脚本は面白いだろう?思想だけで悪と決めつけて糾弾するのが正義の行いか?」と、脚本家にしかできないやり方で彼は正攻法に闘い続けたのです。職業という枠を超えて、生き様としての脚本家を体現したダルトン・トランボの雄姿をぜひご覧ください。

あらすじ

ハリウッド黄金期に第一線で活躍する脚本家ダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は、冷戦の影響による赤狩りの標的となり、下院非米活動委員会への協力を拒んだために投獄されてしまう。出所後もハリウッドに干されたままのトランボは偽名を使って脚本を書き続け、アカデミー賞を2度も受賞する。逆境に立たされながらも執筆をやめなかった彼はどのような信念を持っていたのか。

 

2.「ヘイル、シーザー!」

主演俳優が誘拐された!?何でも屋が奔走するドタバタ喜劇!!

「ヘイル、シーザー!」は、映画会社の重役を務める何でも屋のエディが誘拐された俳優を探し出すコメディ映画です。エディは通常の業務に加えて、俳優の不祥事の隠ぺいや、ゴシップ記事を狙う記者をいなしたりとスタジオ内で起きたトラブルを解決する忙しい人です。テレビの台頭によって傾きかけた経営をなんとかするのも彼の仕事でした。資金をやりくりするためにB級映画を削減して、1本の作品にかける大作主義をとっています。しかし、そんなときに起きてしまったのが主演俳優の誘拐でした。撮影を延期すればそれだけコストがかかるため、「一難去らずにまた一難」の状態で彼は誘拐事件も解決するために忙しない一日を送ることになっていきます。

ここがおもしろい!
本作はフィクションですが、実在の人物や出来事をモデルにしたストーリーのため映画の豆知識になるようなネタが豊富です。作中で製作している「ヘイル、シーザー!」は物語上でイエス・キリストを扱っているため描写の仕方に問題がないかと、神父や牧師たちに意見を伺うシーンがあり、これは実際に行われていたことです。ほかにも、西部劇のスターがほかの映画では訛りが酷くて大根役者扱いされるなど、様々な映画製作の苦労が面白おかしく描かれています。また、これに関連して、本作は前項で紹介した「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」と同じ時代を描いた作品であるため、共産主義の話も出てきます。ネタバレになるので詳細には書けませんが、「トランボ〜」を観てから本作を視聴したほうがより楽しめますのでぜひセットでご覧ください。

あらすじ

1950年代のハリウッドで、あるメジャースタジオは社運を賭けた超大作映画「ヘイル、シーザー!」の撮影をしていた。しかし、主演俳優で世界的大スターのウィットロック(ジョージ・クルーニー)が何者かに誘拐されてしまう。事態の収集をするため何でも屋のエディ・マニックス(ジョシュ・ブローリン)は、セクシー若手女優やミュージカルスター、演技がヘタなアクション俳優らを巻き込んで、事件解決に向けて走り出す。

 

3.「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

映画史に残る事件と俳優とスタントマンの熱い友情物語!

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、落ち目の俳優リックと専属のスタントマンのクリフが主人公の友情物語です。舞台となる1969年のハリウッドで実際に起きた「シャロン・テート殺人事件」を取り入れたストーリーになっています。「シャロン・テート殺人事件」とは、「戦場のピアニスト」「ローズマリーの赤ちゃん」などの映画で知られる巨匠ロマン・ポランスキー監督の妻シャロン・テートがカルト集団によって惨殺された事件です。メソメソしているリックをクリフが慰めている傍ら、リックの隣に住むポランスキー夫妻に悲劇が徐々に近づいていき、リックたちもそれに巻き込まれていきます。明るい雰囲気をスリラーが浸食していく、コントラストの効いたハラハラする映画です。

ここがおもしろい!
1969年当時のハリウッドの街並みや映画スタジオの再現にとことんこだわっているのが本作の特徴です。監督のクエンティン・タランティーノはCGが嫌いであるため、街に関しては通りを貸し切って当時の街並みを蘇らせました。ほかにも、ロマン・ポランスキーを始めとして、スティーブ・マックイーンやブルース・リーといった有名人が役として出てきて、「こういうところにあの有名人がいた」という点も再現しているところに徹底したこだわりを感じます。当時は「ハリウッド黄金期が終わる直前の年」と言われており、まだきらびやかな雰囲気が残っています。看板や路肩に停まっている車、人々のファッションなどをビジュアルで楽しめるのは映画ならではの醍醐味ですね。ぜひご覧ください。

あらすじ

リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)はテレビ俳優として人気のピークが過ぎ、映画スターへの転身を目指していた。しかし、目まぐるしく変化する映画業界で神経をすり減らしてしまい、うなだれる彼を付き人でスタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)がそばで支え続けていた。そんなリックの家の隣に一躍時代の寵児となった気鋭の映画監督ロマン・ポランスキーと、その妻で新進女優のシャロン・テートが引っ越してきていた。今まさに栄光への階段を昇っているポランスキー夫妻を見たリックは、自分も俳優として再び輝くため、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演することを決意する。そして1969年8月9日、彼らの人生を巻き込んだある事件が発生する。

 

4.「ディザスター・アーティスト」

駄作すぎて大ヒットしたカルト映画はこうやって作られた!!

「ディザスター・アーティスト」は、カルト映画「ザ・ルーム」の製作過程を基にしたコメディ映画です。「ザ・ルーム」は“史上最大の駄作”としてカルト的人気を集めた映画で、トミー・ウィソーという全くの素人が監督・脚本・主演を務めました。理解できない演出や脚本、演技の拙さなど、ほぼ全ての要素が酷評されたのですが、酷すぎて逆に面白さを見出す観衆がどんどん増えてカルト映画の地位を確立しました。そんな映画がいったいどうやって製作されて公開に至ったのか。トミーと親友のグレッグを主人公に、彼らの出会いから詳細に描かれていきます。本作は興行的に成功し、その影響で「ザ・ルーム」は2018年1月に全米600の映画館で異例の拡大公開が行われ、日本でも2020年にミニシアターで初公開されました。

ここがおもしろい!
「ザ・ルーム」は自主製作映画なのですが、製作費は約6億円と大金がかかっています。トミーがどうしてそんな映画を製作することができたのでしょうか?彼に出資する変わったスポンサーがいたのでしょうか?実は、このお金は全て彼自身の懐から出てきたものでした。彼は映画のセンスもコネも持ち合わせていないのですが、お金だけは膨大に持っている超金持ちだったのです。「どうしてそれだけのお金を持っているの?」その質問に彼は決して答えません。それだけではなく、出身地と年齢も決して明かしません。このミステリアスさと無謀に思えることにチャレンジしていく行動力に、一種のカリスマ性を感じられるトミーの魅力が見どころです。興味をもたれたかたは「ディザスター・アーティスト(大失敗の芸術家)」をご覧ください。そして、本作を楽しめたかたはぜひ「ザ・ルーム」も続けてご覧ください。

あらすじ

俳優を目指す19歳のグレッグ・セステロ(デイヴ・フランコ)は、トミー・ウィソー(ジェームズ・フランコ)という風変わりな男と演劇クラスで出会い、自分をさらけ出すことを一切恐れないトミーに興味を抱いた。同じ夢を志す2人は意気投合して、ハリウッドがあるロサンゼルスへ引っ越すことに。しかし、勢いだけで飛び出した彼らに現実の壁が突き当り、月日だけが過ぎていった。そしてある日に自分たちで映画を製作することを思いついて早速実行に移したが、そこでもまた壁に突き当たってしまう。

 

5.「サンセット大通り」

忘れられた大女優の狂気に巻き込まれたヒモ男の苦難!

「サンセット大通り」は、売れない脚本家のギリスが大女優ノーマの家で半ば監禁状態にされてしまう映画です。不朽の名作として数え挙げられる本作は、ご覧になられたことがなくても名前は知っているというかたが多いのではないでしょうか。本作は、忘れられた大女優の妄執を利用してヒモになった男が逆に追い詰められるという物語です。ノーマはサイレント映画時代の大女優だったのですが、いまでは誰からもオファーが来なくなってしまいました。それはトーキー(映像と音声を同期させた)映画の時代に取り残されたから、という背景があります。「映画会社の権力者たちはアイドルを作っては破滅させた」という彼女のセリフは今現在の芸能界にも当てはまりそうな普遍性がある名セリフですね。

ここがおもしろい!
本作は1950年に公開された昔の映画のため手が出しにくいと感じられるかたが多いと思いますが、けっこう笑えるところがあるため視聴のハードルは低目です。ノーマは自分で書いた脚本の手直しをギリスに頼み、彼は「これで仕事にありつけたぞ、しめしめ」とヒモみたいな生活を送ることになるのですが、だんだんとノーマから迫られるようになってきて「ちょっとヤバいことになってきたかも」と焦り始めます。これだけでも少しコメディっぽさを感じられますが、面白いのは本作のオープニングはギリスの死体がプールに浮かんでいるところから始まるのです。死んじゃってるのです。また、死んでいるはずのギリスのナレーションが流れており、「プールに浮いてる死体があるだろ。これが俺」というセリフから何があったのかという回想シーンが始まります。けっこうコメディ調で観やすそうな物語であると思うのですが、いかがでしょうか?それなのに、ラストがかなりホラーで怖いという妙味が名作たる所以を感じさせます。

余談ですが、オープニングは同じようなナレーションが流れる別バージョンもあり、それを試写で上映したところ観客が爆笑したため、現在のオープニングになったそうです。それでもまだちょっと面白い気がします。

あらすじ

脚本家ジョー・ギリス(ウィリアム・ホールデン)はハリウッドでの成功を夢見ているが、仕事ではスランプに陥り、生活では借金取りに追われる、どん詰まりの生活を送っていた。ある日に、借金取りから逃げるために豪邸の中に忍び込むと、そこはサイレント映画時代の大女優ノーマ・デズモンド(グロリア・スワンソン)の家だった。ノーマは自身の復帰作として書いた脚本の手直しをジョーに頼み、仕事がないジョーはそれを引き受けた。しかし、彼はやがて自身の全てをノーマに捧げることになってしまう。

 

まとめ

以上、「舞台はハリウッド!映画製作に携わる人が主人公の映画5選」でした。アクションやラブロマンスのように大量に製作されているジャンルではありませんが、そういった映画でも実は映画作りの大変さを別のものに例えたストーリーだったりすることがあります。本記事で紹介したダルトン・トランボはまさにそうやって脚本を書いていたのではないか、そんな評論もされることがあります。どれも見ごたえのある作品ばかりなので、興味を持たれたかたはぜひご覧ください。また、「サンセット大通り」を除いて舞台の年代にあわせて時系列順に紹介しているので、順番通りにご覧いただくと時代背景が把握しやすくなるかと思います。