端島の向こう、“もうひとつの島”に桜が咲く—。2024年に放送されたTBS日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」第3話。主人公たちが、端島(軍艦島)の隣にある「中ノ島」で桜を見るシーンがある。劇中では、炭鉱長が島の人々のために桜を植えたというエピソードが語られた。実際の中ノ島にも桜があったのだろうか?

「中ノ島」とは
長崎港沖に浮かぶ中ノ島は、周囲はわずか0.7kmの小さな島だ。端島と同様にかつて炭鉱として開発された。しかし採掘期間は短く、のちに火葬場やレジャー施設として使われ、今は無人島となっている。

島にはかつて炭鉱として栄えた時代のレンガの構造物が今も残っている。昔の写真を見ると、島の頂上に公園が整備されていて、そこには実際に桜が植えられていたという。今はもう見ることができない「公園があった時代の中ノ島」を、ぜひ写真で見てみて欲しい。
「今も咲いている」
一帯で瀬渡し船を運営している馬場広徳船長によると、無人島になった中ノ島では「今も毎年桜が咲いている」という。
中ノ島は海から急峻に立ち上がる形状のため、頂上の木々は外から見えにくい。船から撮られた写真でも、木立の隙間からわずかに花が覗いているだけだった。
—よし、ドローンで撮ろう。
秋の中ノ島で桜を探す
撮影を始めたのは、ドラマ放送中の2024年11月。King Gnuの「ねっこ」が頭の中でリフレインし、気分はすっかりドラマの世界。
目的はただ一つ。「桜の木は、本当に存在するのか?」
秋の桜の木の特徴を頭に入れ、中ノ島の上空へ。頂上は巨木に覆われていたが、モニター越しに1本の木を見つけた。「これだ」と確信したその木は、葉も花も落ちた枯れ木だったが、どこか不思議な存在感を放っていた。

そして春ー
2025年春。今年は寒暖差が激しく、街中でも満開の木と蕾の木が入り混じっていた。
中ノ島の桜は、果たして咲いているのか?咲いていてほしい。そう信じて再び中ノ島の上空へ。
遠くからは何も見えなかった。だが、ドローンが近づくにつれ、モニターにピンク色の花が浮かび上がってきた。

桜の木は多くて「3本」だと思っていたが、よく見ると、春の訪れを静かに告げる「4本」のヤブ桜が、木々に埋もれながらも確かに花を咲かせていた。コンクリートの島とも言われた端島(軍艦島)の島民に、春の訪れを知らせていた桜の木。
決して華やかではない。むしろ周辺の木に絡まれ、埋もれ、押しつぶされそうな中で花開き、かろうじて存在が分かるヤブ桜だ。でも、季節がくるごとに人知れず花を咲かせてきたその姿は、力強く、美しい。

孤島の桜は、まるで昔を懐かしむようにー
無人となった軍艦島に向かって咲いていた。



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