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日本酒の原形ともいわれる『どぶろく』
どぶろくをつくる醸造所が3月25日、長崎市出島町にオープンします。

世界に開かれた扇のまち 出島から『どぶろく』を通して 古き良き日本の食文化を伝えたい──若き醸造家夫妻の新たな挑戦です。

醸造所は祖父が営んでいた骨董屋

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米と麹、そして水のみを原料としてつくられる日本古来の酒・どぶろく。

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でじま芳扇堂(ほうせんどう) 日向勇人さん(29):
「素材を余すことなく楽しむ、食感も楽しめる、そういうふうなお酒になってます」

その歴史は稲作の伝来とともに始まったと言われています。

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かつて、国内最先端の文化の発信地だった長崎市の出島。

そのそばに新たにどぶろくの醸造所を構えるのが日向勇人さん、咲保さん(30)夫妻です。

屋号は『でじま芳扇堂』
かつて咲保さんの祖父が骨董品店を営んでいた場所です。

でじま芳扇堂 日向勇人さん:「蔵の方からご案内していきます」

どぶろくは“原料の見極め”が必要な面白い酒

勇人さんは福岡県出身です。

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清酒『鍋島』の蔵元として知られる佐賀県の富久千代酒造で酒づくりを学ぶ中で、清酒とは異なる、どぶろくの魅力を知りました。

清酒とどぶろくは原料は同じですが、製造工程に違いがあります。

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原料を混ぜ発酵させた『もろみ』を濾したものが “清酒”、濾さないものが “どぶろく” になります。

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でじま芳扇堂 日向勇人さん:
「どぶろくの場合って使う素材とか育っていった過程がすべて味と形に反映されるので、原料の持つ個性をどういうふうに引き延ばしていくかっていう点で、すごく見極めが必要になってくるので、面白いお酒だなと思ってます」

東京浅草の醸造所でブランドを立ち上げ クラファンでは目標額の2倍

勇人さんがどぶろくづくりを始めたのは2年前。

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東京・浅草のどぶろく醸造所に勤めながら、オリジナルのどぶろく『芳扇』を立ち上げ、数量限定で販売を始めました。

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その後、開店資金をまかなうため、クラウドファンディングを展開。
すると目標の2倍にあたるおよそ400万円が集まりました。

こうしてできた醸造所には、勇人さんの醸造家としてのこだわりが込められています。

出島の “扇” がおくる風に載せた芳香

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でじま芳扇堂 日向勇人さん:
「奥の部屋が、おそらく全国初となる道路から見える麹室(こうじむろ)

麹室は米に麹を付ける作業を行う酒づくりの心臓部といえる場所です。

日向勇人さん:
「一番重要な工程になってくるのでそこをあえて見せることによってより酒づくりとかお米、稲作というふうな日本の伝統文化を肌で感じやすくしたいなと」

ここで来月から仕込みを始め、およそ1か月後には出島生まれの『芳扇』が完成する予定です。

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日向勇人さん:
「出島といえば扇の町。扇が送るものは風であり、香りであり、文化でありというところで、芳しい香りを、扇の町から日本の素晴らしい伝統文化の香りを発信していく、そういうふうな思いを込めて芳扇、という銘柄を命名しました」

こだわりの酒器と食 Brewery × Gallery × Bar

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日向さん夫妻の店の中に入ると、そこには二人が厳選した酒器が並びます。
酒を楽しむ器を展示販売するギャラリーも設けられています。

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さらに、店の奥にはバーカウンター。
ここでは咲保さんがどぶろくを始めとした多様な酒と、それに合う『食』を提案します。

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でじま芳扇堂 日向咲保さん:
「いい酒をつくる酒蔵さんっていっぱいあって、私たちもそのファンの一人でもあるんですけど。どぶろくが一つの選択肢となればいいかなと思っているので。
これを食べている時はこの酒の方がいいかなとか、飲酒飲食の文化、日本の昔からあるものをトータルで伝えていきたい」

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どぶろくだけではなく、器や食も含めて古き良き日本の食文化を発信する。それが、まちなかの『醸造所ギャラリー』としての役割です。

大きな反響…売り切れる店も

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でじま芳扇堂のオープンに期待を寄せているのが、老舗酒店の4代目で日向さん夫妻と親交がある竹山慎平さんです。

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酒屋 諏訪の杜 竹山 慎平さん:
「自分の歩いて行ける場所に新しく醸造所ができるっていうのは楽しみですよね、みんなもっとお酒がより身近に、近く感じられるようになるんで」

この店で先行販売していた『芳扇』はすでに売り切れとなるなど反響が広がっています。

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酒屋 諏訪の杜 竹山慎平さん:
「芳扇が出てきて、芳扇を知るようになって、皆さんから『芳扇ありますか?』とか『どぶろくありますか?』という声がちらほら聞けるようになってきたんで、みんなにちょっとずつ浸透していってるんじゃないかなと」

“どぶろくスタイル” その土地の農産物を活かす

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長崎の人にもっとどぶろくの魅力を知ってもらおうと、今月25日のオープンを前に日向さん夫妻は知人の店でイベントを開きました。

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日向勇人さん:
「米だけでつくるどぶろくだけじゃなくて、地域の農産物を活用して酒にしていこうというのが、僕たちが芳扇堂としてやりたい取り組みたいテーマの一つ。
地域で出てくる野菜とか果物、旬のその時期にしか食べられないものって規格外──ちょっと傷がついちゃうとか、形が悪いとか。
だからこれって上手く有効活用するっていうのが、ある意味 “どぶろく的なスタイル”なんじゃないのかなと」

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作り手が少ないことから長崎ではあまり馴染みのない酒でもあるどぶろく。

この日、初めて口にしたという女性は──

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口にした人:
「ちょっと甘みがあって食感もあってすごく楽しい、お酒ってこういう楽しみ方もあるんだっていう。
ぜひここからいろいろ広がっていって、私もたくさんどぶろく色んな種類を楽しめればなと思いますね」

ようやくここまで来た「出島から送る新たな風」

日向さん夫妻の新たな挑戦は、出島という文化の発信地からまもなく始まります。

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日向勇人さん:
「すごく楽しみですねワクワクしてます。
長崎の魅力を僕たちなりに表現できる場所にしたいなと。
改めて気が引き締まる思いです」

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日向咲保さん:
「やっとここまで来たなっていうところで、これからが肝心なときなので。
周りの方の応援の力を借りながら成長していけたらなと思っているので、見守っていただけたら嬉しいなと私たちは思います」

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まちなかの醸造所ギャラリーから生まれるどぶろく「芳扇」が、長崎そして日本の食卓に “新たな風”を吹かせます。

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どぶろく『芳扇』は1本2,500円で販売されるということです。