長崎では13日と14日、長崎市の出島メッセ長崎で『G7保健大臣会合』が開かれます。今回、長崎市で政府系の国際会議が開催されのは初めてです。
G7の中でも “保健大臣会合” の開催地として選ばれた理由や議論される内容、また、話し合われたことがどのように活かされていくのか、長崎大学の専門家に聞きました。

大きな問題は ”感染症”『長崎は選ばれるべくして選ばれた』

長崎大学 高度感染症研究センターの栁 雄介センター長は、長崎が今回の保健大臣会合の開催地に ”選ばれるべくして選ばれた”と言います。

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長崎大学 高度感染症研究センター 栁 雄介センター長:
「いま一番、保健大臣にとって、あるいは一般の方たちにとって大きな問題というのは感染症。
『開催地としてどこがいいか』となった時に、国内で最も 感染症の ”基礎研究”から ”臨床” に至るまで、色々なことをやってきたところということで、長崎が選ばれたんだと思います」

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長崎大学医学部。
幕末にオランダ軍医・ポンペが長崎奉行所で近代西洋医学を教えたことに始まります。
海外との窓口だった長崎には感染症が入りやすく、ポンペも治療にあたるなど、当時から感染症対策の最前線でした。

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1942年、熱帯医学研究所の前身が設立。
ケニアなどにも拠点を置き、マラリアやエボラ出血熱などの感染症の調査研究で高い実績を残しています。

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コロナ禍においても大きく貢献。
2020年、長崎港に入港したコスタ・アトランチカ号で感染が拡がった際には、一人の死者もなく感染を抑えました。

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栁 センター長:
「”どういう風に感染症を制御したらいいか”ということに経験がたくさんあったことが、大きな力になっていると考えています」

感染症に関する研究は国内トップクラス

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また、新型コロナウイルスの病原性のメカニズム解明や、感染しているかを調べる検査システムの開発、抗ウイルス効果のある物質の発見など、数々の成果をあげています。

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おととし7月には、エボラウイルスなど致死率が高い病原体を使った研究に対応する『BSL-4』施設が完成。
幅広い研究を行うことができる国内唯一の実験施設です。
現在、稼働に向けて準備を進めています。

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栁 センター長:
「BSL-4施設という、国内には例がないような施設もできているということで、長崎が選ばれて当たり前」

【久富】長崎大学がこれまで取り組んできた実績があったからこその、保健大臣会合の開催になったということですね。

【早田】主催する厚労省も、そうした実績から”長崎が開催地にふさわしい”という見解を示しています。

では、13日からの長崎での保健大臣会合では、どのようなことが議論されるのでしょうか?

話し合われる3つの議題

【早田】厚労省は、柱として ”3つの議題”を挙げています。

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(1)公衆衛生危機に対応するための国際保健の枠組みを構築・強化
新型コロナで得られた教訓を踏まえ、将来起こる公衆衛生の危機を予防し、備え、対応していくための国際的な保健の枠組みをどうしていくか?

(2)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて
「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」=全ての人が、適切な治療や予防などの保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態。
それを達成するために何ができるかを探ります。

(3)様々な健康課題に対応するための研究開発の促進
パンデミックや、薬が効かなくなる薬剤の耐性問題などに対応する医薬品の研究開発などが含まれます。

こうしたことが議論された上で、会合2日目の14日には「保健大臣宣言」が採択される予定です。

大学・研究機関として大きな意味をもつ “保健大臣宣言”

この宣言が長崎大学などの研究機関にとって非常に大きな意味を持つことになります。

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長崎大学 学長特別補佐 金子 聰教授:
「G7で出される宣言というのは、現在の ”世界的なレベルでの問題点”が掲げられてくるので、『その問題点に対してG7各国がどう対応しますか?』というのが出てくるんです。
我々としては、そこに協力して参加していくということで、大学・研究機関としては大きな意味を持つのが宣言です」

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例えば、コロナ禍 真っ只中の2021年、イギリスで開かれたG7サミットの首脳宣言には『パンデミック発生から100日以内のワクチン開発を目指す』という “100日ミッション” が盛り込まれました。
その後、日本では国家戦略に掲げられ、長崎大学は研究開発拠点の一つとなり、研究を進めています。

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金子 教授:
「100日以内(の開発)となると、ゼロから作っていたのでは間に合わないので、枠型というか木型(のようなもの)を最初に作っておいて、すぐに市場に供給ができる体制に持っていこうと」

【久富】今回の宣言の内容が、研究の柱や指標になっていくということなんですね。

長崎大学の強みやノウハウを世界に…“保健大臣宣言”に注目

【早田】保健大臣宣言では、どんな内容が見込まれ、どんなことが期待されているのでしょうか。

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長崎大学 学長特別補佐 金子 聰教授:
「新型コロナウイルスのパンデミックで”世界がどう対応したか”とか、今後同じようなことが起きた時に”どう対応していくか”、そういう枠組みを”どう作っていくか”が、多分入ってくると思います。
ワクチン開発体制とか(ワクチンを)世界にどう供給するかとか。
あとは ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ ──
日本だと “国民皆保険”がありますが、途上国はそこまで保険制度が整っていないので、そういう制度を整えるための支援をしましょうと」

また、宣言では、長崎大学の強みやノウハウを活かせる内容が盛り込まれることを期待していると言います。例えば──

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金子 教授:
「長崎大学は今、離島(医療)をやっています。離島での遠隔医療が途上国の僻地医療と非常に同じような状況なので、リモート医療とか遠隔医療に関しての話が入れば、長崎大学としても今、離島でやっていることを応用できる」

保健大臣宣言をきっかけに、長崎大学のノウハウや技術を世界にアピールできれば、今後の長崎の発展にもつながると考えています。

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金子 教授:
「”長崎と言えば、国際保健の街”みたいになって、世界的にも認識されれば、今回のような国際会議が行われて、海外からお客さんがやってきますよね。経済的な発展もまた見込めると思いますので(宣言の内容に)ご期待いただければと思います」

【早田】感染症に関することはもちろん、被ばく医療や離島医療など、長崎が保健医療の分野で世界にアピールできる要素は様々にあります。
保健大臣宣言の中に、そうしたものと通じる内容がどれくらい入ってくるのかが注目されます。