43人が犠牲となった雲仙・普賢岳の大火砕流からもうすぐ32年となるのを前に、現在の山の状態を調べる『防災視察登山』が行われました。
山頂の溶岩ドームはいまどうなっているのかを確認するため、火山研究者らの調査に、2023年4月に入社した酒井晶央記者が 同行取材しました。

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“噴火活動” は収まり、いまは落ち着いた状態となっている雲仙 普賢岳。

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15日、島原市と九州大学が共同で行なった防災視察登山には、火山研究者や防災関係者ら およそ80人が参加しました。

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九州大学 地震火山観測研究センター 松島 健教授:
「皆さん、登山始めます」

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妙見岳に向かう登山道からスタートして、平成新山を目指します。

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1時間ほど進んだところに、溶岩が冷えて固まる際にできた『風穴』と呼ばれる洞窟があります。
奥行は30メートル。夏場でも気温は4度前後で保たれ、かつては蚕や氷の保管に使われていました。

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『風穴』の中まで進んだ県職員は──
「冷たかったです。冷えてました」

ここは、噴火災害の際 飛んでくる火山岩から身を守る “シェルター” の役目も果たしました。

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九州大学 地震火山観測研究センター 松島 健教授:
「見えてますね。溶岩ドームがね」

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酒井 晶央記者:「これから平成新山の警戒区域に入っていきたいと思います」

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普段は立ち入りが禁止されているエリアに入りました。
平成の噴火でできた溶岩ドームを登っていきます。
ここは日本で一番新しい山──完全な岩山です。

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酒井 晶央 記者:
「平成新山の頂上にやって参りました。頂上はとても蒸気が立ち込めており、蒸気の温度は現在91.1度。火山活動が 今も続いているのを肌で感じることができます」

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研究者らが火山の状態を知るため 噴き出す蒸気の温度 を計測します。
噴火当時の温度は 900度近くに達しましたが、ここ数年は 90度前後で推移していて、落ち着いた状態が続いているということです。

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岩肌に目を向けると、少しずつ緑が戻っているのも確認できました。

九州大学の松島 健教授によると『去年から今年にかけて山の形は変わっていない』ということです。

九州大学 地震火山観測研究センター 松島 健教授:
「石の形もほとんど同じですね。大きな変化はないということです」

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しかし、小規模な崩落は起き続けています。
また、風化による溶岩ドームの亀裂も進行しています。2年前には高さ30メートル分が崩れ落ちていました。

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九州大学 地震火山観測研究センター 松島 健教授:
「いつでも崩れる可能性がある。しかも、前ぶれなしに。
地震じゃなくても崩れたりしますんでですね。そういう点であまり近づかないように、なるべく離れたところを歩くように(してください)」

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崩落は火山活動や地震だけでなく、強風などによっても引き起こされる恐れがあり、火山活動が落ち着いていても 決して油断はできません。

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大火砕流から32年。時間の流れの中で、山は生きているということを感じた防災登山でした。