再開された長崎港へのクルーズ船の入港。上陸する観光客の消費活動とは別に、クルーズ船の入港は、長崎にとって大きな効果をもたらします。その中身とは?

【住吉 光アナウンサー 以下 住】長崎の暮らし経済ウィークリーオピニオン、平家 達史NBC論説委員(以下【平】)とお伝えします。

NBC

【平】今回のテーマは「クルーズ船 入港再開で港にも活気
新型コロナが落ち着き始めて、クルーズ船の長崎港への入港が再開されました。住吉さんはどんな感想を持ちましたか?

【住】やっぱり観光客が戻ってきたという印象で、それによる経済効果が期待できるかなという点ですね。

【平】そうですね、街中でもクルーズ船で訪れたであろう外国人観光客を見かける機会が増え、コロナ禍前に戻りつつある印象を受けますね。
こうしたクルーズ船が入ることによる経済効果は、実は観光業だけではないんです。

様々な人たちに支えられている長崎港

NBC

今月20日の長崎港。入港したのはイギリスのクルーズ客船”クイーンエリザベス”です。入港を支えるために、いろんな作業が始まります。

NBC

まず”タグボート”。最近のクルーズ船は自力で接岸することができます。なのでタグボートの力を借りなくても大丈夫ですがが、警戒のために必ず船の周りで対応します。

NBC

そして”係留ロープを捌く人たち”。船の乗組員との間で絶妙な呼吸を保ちつつ、何本もの『もやい綱』を岸壁に結んでいきます。港の熟練工といった感じです。

こうした作業というのは、入る船が違うと作業の相手となる人たちも毎回変わるので、決まった作業をある程度決まった時間でやらないと混乱も生じます。なので熟練の技が求められます。

【平】クルーズ船入港で発生する港周りでの仕事をまとめました。こんなにあるんです。

NBC

・水先案内人
・タグボート
・係留ロープ作業
・水の補給
・食品補給
・ごみ処分
・船員交替
・船用品補充
・病人ケガ人受け入れ
・船体清掃
・岸壁確保

【平】先ほど紹介した”タグボート”や”係留ロープの作業”以外に”水先案内人”。
これは港内での案内をする仕事です。
さらに”食料の補給”、船で発生した”ごみの回収と処分”、けが人や病人が発生した場合の”病院の手配”まで。
クルーズ船が入るとこれだけの仕事が発生し、長崎には港を支えるためにこうした作業を行う業者が存在しているんです。
コロナ禍でクルーズ船の入港が止まってしまった時には、客船を対象としたこれらの業務がなくなってしまい、関係業者の中には厳しい経営環境に直面したところもあるわけです。
大きな装備や経験のある社員が必要となる業務も多く、コロナ禍の負担も大きかったことが想像できます。

【住】いい港かどうか論じられるときには、地形や港の位置などが考慮されるんでしょうけど、こうした業者の力量も関係してくるわけですね。

【平】そうなんです。港は様々な人たちによって支えられているということですね。

【住】港って岸壁があって、上陸用の設備があれば成り立つわけではないんですね。人の力もとても大事なことがわかりました。

【平】ここは長崎が誇っていいところですね。

港も競争の時代 長崎港の価値を高める

【平】ちなみに"岸壁確保"とありますが、ここで”岸壁使用料”が発生します。長崎港で9万トンのクイーンエリザベスが一日岸壁を使用した場合、いくらになるかわかりますか?

【住】考えたことがなかったのでわかりませんが…

【平】客船の場合1トンあたり7.2円とされているので、単純に掛け算をするとクイーンエリザベスの場合にはおよそ65万円になります。これが収入として長崎県に入ってきます。船が入るたびに県の財政にもプラスがあるということですね。客船は岸壁使用料の単価がほかの種類の船より高く、船そのものも大きいので、高額な収入になります。

【住】大型のクルーズ船が入ることで、港そのものも潤っていくんですね。

【平】そういうことです。
いろんな意味で誇れる長崎の港という話題だったんですが、今回の取材で一つ残念なものを見つけました。

NBC

松ヶ枝国際ターミナルの入口に設置されている地図。上陸してきた観光客が行き先を調べるときに見る可能性がありますが、かなり傷んでいます。地名も簡単には読めません。

NBC

道のように見えるのは”ヒビ”でした。案内板そのものが劣化して判別不能、さらにここ数年名称が変わった電停も、以前の名称のままでした。
外国から来た人にとってはわかりにくいだけでなく、間違った情報を見せられたことにもなり、混乱を招きかねない設備といえます。

管理している長崎県によりますと、この案内板が設置されたのは2011年。決して古くはないんですが、観光地の玄関口の設備としては適切ではありません。この案内板について県は「傷んで読みづらくなっているのは把握している、改善改修を検討している」としています。

【住】できれば、クルーズ船の受け入れ前に改修して欲しかったですね。

NBC

【平】港も今、競争の時代です。2017年に長崎に入港した同じイギリスのクルーズ客船”クイーン・メリー2”。世界最高峰の客船ともいわれています。こうした船が入ることによっても港の格は上がっていくといわれていますが、”クイーンメリー2”はこれ以降、長崎には来ていません。クルーズ船が寄港する港の間でも様々な競争があります。寄港地も常に試されているんですね。

今回紹介したような、そもそも備わっている長崎港の総合力に加えて、外国人観光客に対する”船を降りてからの便利さ”や”長崎ならではの楽しみ”に磨きを掛けて、長崎港に寄港する価値をあげていきたいですね。

【住】平家 達史NBC論説委員とお伝えしました。