今年4年ぶりに奉納踊が行われる長崎市諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」の踊町を紹介するシリーズ「復活!奉納踊」
今回は栄町の阿蘭陀万歳です。
万歳・才蔵のオランダ人が、コミカルな動き、おどけた表情で “万歳” を披露する様を演じます。
「阿蘭陀万歳」は1933(昭和8)年、東京初演の新作舞踊です。
1977(昭和52)年から、これまでに6回、阿蘭陀万歳を奉納してきた栄町。
踊り子も町の人も「長崎くんち 奉納踊」を待っていました。

万歳役 花柳 寿女晏奈(すめあんな)さん(25):
「いよいよ近づいてきたんだなと ワクワクが(止まらない)」

栄町 自治副会長 折式田 一豊さん:
「夜も寝られん。仕事なしでこれだけですもん」
毎回、趣向を凝らした演出で見る人を魅了してきた栄町の阿蘭陀万歳。

17年前の2006(平成18)年は、子供が万歳・才蔵を演じる「子供万歳」を。

前回、2013(平成25)年は、長崎くんち史上初めて「阿蘭陀万歳」を男性が舞いました。
“Wキャスト”の演出は…コロナ禍前から決めていた

(2020年 取材)舞踊指導 花柳 寿女香(すめか)さん:
「 “2組” で競わせたいと。万歳もですね。競わせると楽しいかなと思って」

10年ぶりとなる今回の奉納は、万歳・才蔵を2組のペアが演じるWキャストに挑戦します。


まず、1組目。万歳を演じるのは田川太一 事 花柳 寿女寿郎(すめじゅろう)さん(24)。そして才蔵を 西村 圭 事 花柳 太香九郎(たかくろう)さん(38)。

もう一組は、万歳を 山口晏奈 事 花柳 寿女晏奈(すめあんな)さん(25)。
才蔵を、久原 一花 事 花柳 千花寿郎(ちかじゅろう)さん(18 高校3年)が演じます。

千花寿郎さんは1歳から町の唐子役として参加。長崎くんちへの出演は、今回が3回目です。

花柳 千花寿郎さん:
「すごくおくんちが大好きなので(コロナ禍などで奉納踊が)なくなってしまって悲しい気持ちはあったんですけど、やっと出来ると思ったら血が騒ぐような気持ちがしています」
躍動感が増した一方で 故郷を思う静かな演出も

7月下旬、本番の舞台での 初めての“場所踏み” です。


今回、舞踊の指導は、花柳 寿女香さんの娘である花柳 太香寿郎(たかじゅろう)さんが主に務めています。
太香寿郎さんは、千花寿郎さんの母であり、同じ才蔵役で 過去に2度、長崎くんちに出演した踊りの大先輩です。


4人が所狭しと駆け巡ることで賑やかさが増した一方、今回、万歳と才蔵がふるさとを懐かしむ “望郷シーン”を加えることで、静と動のコントラストがより強調されました。

寿女晏奈さん:
「2人の息ももちろん、4人で踊るので(難しいです)。まだ役に入りきれてないので」

阿蘭陀万歳はアクロバティックな動きも多く、合わせるのも一苦労です。

太香九郎さん:「速さがね(合っていない)。自分の速さで回していい…見えるから」
千花寿郎さん:
「最後に(脚を)回すところがあるんですけど、ちょっと運動音痴なので。(皆さんが)合わせて下さると言われたので任せようかなって」
太香寿郎さん:
「まだ役になり切っていないところもあったり…。内に籠っている感じです。みんな」
母の ”才蔵” に近づきたい

万歳・才蔵という役に入り込むため、お盆も稽古は続いていました。
目線や体の使い方など細かな部分を体に叩き込みます。
太香寿郎さん:
「手でいってますが、体に手がついてくる感じですからね」
千花寿郎さん:
「母の阿蘭陀万歳が私の中では一番だと思っているので、完全とはいかないまでも、母に近づけるような阿蘭陀万歳をしたい」
本番をイメージして

8月19日は、本番で被る帽子をつけ、諏訪の舞台で初稽古です。
千花寿郎さん:
「(踊の最中に帽子が)落ちないかなって思ったりもするんですけど…嬉しい感じがします」

新たな歴史を刻む晴れ舞台まであと1ヶ月あまり。
稽古を重ねることによって、自信もついてきました。

表情はすでに万歳と才蔵です。

寿女寿郎さん(24):
「しっかりと神様に奉納出来るような踊りが出来ればなと」

太香九郎さん(38):
「期待に応えられるようなものにしたい」
心を一つに4人で魅せる阿蘭陀万歳!

寿女晏奈さん:
「4人で息を合わせて、自分達も楽しんで阿蘭陀万歳ができればなと思います」

千花寿郎さん:
「母みたいに “その場にいる”ような奉納ができればと思います」

Wキャストで挑む4人が自分達にしかできない阿蘭陀万歳を目指します。