今年4年ぶりに奉納踊が行われる長崎市諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」の踊町を紹介するシリーズ「復活!奉納踊」

今回はスピード感ある勇ましい船回しで長坂を盛り上げる船大工町の川船です。
速さと迫力を兼ね備えた船大工町の川船。
踊馬場を縦横無尽に曳き回し、激流に逆らう船を演じます。

船を曳きまわす20人の『根曳衆』は “波”を表します。


かつて海に面していた船大工町。
船づくりに関わる人が多く住んでいたのが町名の由来で、いまでは市内屈指の歓楽街となっています。
町の名前にちなんで、明治時代から川船を奉納しています。


見せ場の一つが、船頭の網打ちです。
踊り馬場を川に見立て、子どもが扮する船頭が投網をし、魚を一網打尽にする趣向です。

10年ぶりの奉納で船頭の大役を務めるのは光安悠真くん(8歳 小3)です。

船頭 光安 悠真くん:「ちょっと緊張してます」
10年ぶりの船回しで…

今回の根曳衆は、半数が新人です。
船回しの初稽古は先月中旬でした。

「礼!お願いします」


半数は新人、経験者でも10年ぶりに触れる船。
最初はまっすぐ動かすことすら、ままなりません。

根曳(経験者)萩原 剛さん:
「“采”がバッて振ったら後ろやし、引いたら前やし。絶対 ”采”ば見て。止めるときも “采”ば見らんば。俺たちいちいち言わんけん、言えんけん」

船の重さは約2トンと言われます。
思い通りに動かすには、根曳全員の意思統一と『押す』『曳く』『止める』の力加減が重要になります。

根曳(経験者)鎌倉 太郎さん:
「結構早めにこうせんば、後ろは幅のないけん止め切れん」

長采 平良 光一さん:「気合いがまだまだ空回りしてた」「今日は最低でした」
家族全員で力を合わせて

新人根曳の最年長は45歳の白倉一行さんです。
10年前のくんちでは裏方として船大工町を手伝いました。
今回、大太鼓を務める娘の雪那さんとともに出演します。

殿村 育生 自治会長:
「グラッてくるときのある。(船を)離さんごと」
白倉 一行さん:
「思っていたように…力の加減が思うようにできない。体感しましたね。やっぱりやってみないとわからないです」

妻と娘3人の5人で暮らす白倉さん。家族全員が大のくんちファンです。

前々回は当時4歳の長女・花音さんが先曳で出演。

前回は花音さんが大太鼓、結衣さん・雪那さんが先曳を務めました。
久富 美海アナウンサー:「どんなときが1番楽しいって感じますか?」

三女(大太鼓で出演)雪那さん(11歳 小学6年):
「駆け足と回しのとき。そこのところが一番楽しいっていうか、面白いから」

白倉 一行さん:
「自分、膝が悪いので(前回は)諦めていたんですけど、それを他の根曳さんたちに言ったら『そんなの関係なかけん出れば?』って言われてから」
ようやく巡ってきた奉納踊の年── ですが、複雑な思いの家族もいます。
コロナで延期で “ガン泣き” 参加できなかった家族の思いも乗せて

次女・結衣さん(15歳 高校1年):
「自分はお姉ちゃんが(船に)乗っていたから(囃子として)ずっと出たくて。
去年くんちが中止って言われたときは、もう本当に “がん泣き”して」
次女の結衣さんは、本来3年前に囃子方を務めるはずでした。
しかし囃子方は中学生まで。3度の繰り延べで高校生になり、今回の出演は叶いませんでした。

妻・慶子さん:
「年回りってすごくあるじゃないですか、おくんちって。
コロナがなかったら出られた人とかがいるので、乗れない人たちの気持ちも一緒に乗ってほしいなって」
結衣さん:「残り1か月間、悔いが無いように頑張ってほしいなと思います」
いまは60点。本番は満点超える奉納を

稽古も大詰めを迎えた先月下旬。
根曳衆の息も合い、目指す船回しに近づいてきました。

長采 平良 光一さん:
「だいぶスピード良くなってきた。バッチリバッチリ。行きましょう。頑張りましょう」

添根曳 上戸 貴之さん:
「(白倉さんは)パワフルですよ、体とサイズ見たらわかります」
(大太鼓で娘の)雪那さん:「言われてる(笑)」
添根曳 上戸 貴之さん:「オールドルーキー」
白倉 一行さん:
「みんなと一緒に回せているところが楽しいです」
「出る予定だった次女の分も、前回大太鼓で出た長女の気持ちも一緒にして頑張っていきたいと思います」

長采 平良 光一さん:
「最初はもうズタボロでしたけど。3点から始まりましたからね。
だいぶ良くなってきたんで50点、60点ぐらいですかね?
55点にしときましょう。
当日のパワーで頑張らせていただきます」

船大工町の川船。
町に関わる全ての人の想いを乗せて、満点を超える奉納を目指します。