長崎の基幹産業の1つ、造船業にも今、デジタル技術を導入する動きが広がっています。

「イメージと違う…」で後戻りが発生

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100年近い歴史を誇る長崎市の井筒造船所。50人程の従業員が年間2隻ペースで漁船などを手掛けています。

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建造にあたっては、“平面の図面”をもとに打ち合わせを行っていますが、実際に完成した船が “船主のイメージ”と違っているとして、改修を求められることもあると言います。

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井筒造船所 吉原隆社長:
「ここはこうでこうでと二次元の紙の画面を使って一生懸命説明するんですけど、これがなかなか伝わらないんですよ。『イメージと違います。やり変えてくれ』と(船主側が)言ってくることが多々ありまして、現場で対応せざるを得ない。後戻り工事が発生すると、結局そこにコストがかかってくる」

<仮想空間=メタバース>を使って、今年4月からこの問題の解決に取り組み始めた船舶設計企業が長崎市にあります。

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船の設計をメタバース内に落とし込み、立体的な仮想空間を作ります。
その上で船内に自分の分身=アバターが入り、確認を行うことで、図面上の船を “船主の理想” に出来る限り近づけるという狙いがあります。

アバターで確認 設計イメージの食い違いをなくす

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ネイバルアーキテック長崎 内田恭浩社長:
「視覚的に見やすいのを提供して、契約前にこういう船になりますよというのを先に見せて、できるだけ船主さんと造船所さんの意見の食い違いがないようにしっかり進めていくことを目的としています。実際に物を作る前に試すという使い方がベストなんじゃないかと思っています」

アバターの身長や体型を 船主や船員と合わせることで、設計の段階で船がイメージ通りかどうかを確認できます。

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ネイバルアーキテック長崎 内田恭浩社長:
「船の(外からみたときに)縁から(アバターの顔が)見えるじゃないですか。これを船主さんが『あれそんなはずないよね』って話になったんですよね。『もう少しここの縁が上に来るんじゃないか』という指摘がありました。これって、2次元の図面では絶対分からないことなんです」

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船主はオンラインでいつでも船の設計を確認することができ、改善して欲しい点を画面上に記すこともできます。

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この日は、巻き網漁船を発注した島根県の水産会社と井筒造船所による会議が開かれました。
メタバース上では、“アバターの体型の設定”が船の大きさを把握する上で重要になります。

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ネイバルアーキテック長崎 内田恭浩社長:
「人がいるとやっぱり臨場感がありますね。実際に船の大きさが分かるというか」

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網を巻き上げるスペースが必要な巻き網漁船。アバターによってその空間がより具体的にイメージできます。
 

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事代丸 牧野勝取締役 漁労長:
「“魚締め”を付ける向きだけで全然違う。スペースを(考慮)しないといけないから、身長がすごく大事」

ネイバルアーキテック長崎 内田恭浩社長:
「アバターの太り具合とかでも 船が小さく見えたりとか変わるので、できるだけ(設計を)詰めた方がいいですね」

遠方の船主との打合せ負担を軽減し 納期の短縮にも

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これまで打ち合わせの度に、島根から長崎まで最大10時間の移動時間がかかっていましたが、メタバース上で打ち合わせが可能になるとその負担がなくなります。

また、これまでより具体的に船の完成形が見えることで改修作業を減らせるため “納期の短縮”にも繋がります。

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事代丸 牧野勝取締役 漁労長:
「そこの空間にいるときに、頭が当たるか当たらないのか、手を伸ばした時に、そこに届くか届かないのかっていうのが大事なってくるので。若い漁師も育ってますので、自分が退いたときに(メタバースが)強みになるんじゃないかなと」

事代丸 牧野進さん(息子):
「僕らの世代の時には、もっといい打ち合わせが出来るようなそういう物になって欲しいです」

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巻き網漁船「事代丸」は、通常より工期が2カ月短縮され、来年8月末に引き渡される予定です。

ネイバルアーキテック 長崎内田恭浩社長:
「よくも悪くもしっかり見せて、船はこういう船になりますよって見せて、お互い満足いく形で、早い段階で船の仕様を固めていけば、手戻りだとか無駄な作業が減るんじゃないかと思ってます」

漁船のオペレーション研修にも活用

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一方、船が完成した後もサポートは必要になります。

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長崎総合科学大学の松岡教授が取り組んでいるのは、360度カメラを使って船内を撮影し、その写真を繋ぎ合わせて再現する3Dの船です。
画面をクリックすると機械の説明文や動画も見られるようになっています。

船員たちの高齢化が進む中、ベテランから若手への指導に活用されることが期待されています。

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長崎総合科学大学 工学部工学科 船舶工学コース 松岡和彦教授:
「(海運業界は)非常に高齢化しています。また船員さんの数も少なくなってます。ベテランの船員さんがいて、若手を現場で教えながらということがなかなか難しくなっていて、陸上側からなら何とか支援ができるいう状況になりつつあるので、“同じもの”を見ながら話せば 話が通じるんじゃないかと」

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地元企業や大学がデジタル技術を活かして長崎の造船業を支える取り組みが進められています。