【田中哲実(ライター)=コラム『生産地便り』】

◆中央所属馬同士の争いになるかと思われたが…

 去る6月2日(木)、今年初となるホッカイドウ競馬の交流重賞「第26回北海道スプリントカップ」が行われた。1着賞金2200万円。距離1200mの外回りコース。中央所属馬4頭、大井の1頭、計5頭が他地区からの遠征馬である。それを迎え撃つ地元勢5頭。合計10頭によって争われた。

 この日は、4日前にドウデュースに騎乗し、6度目となる日本ダービー制覇を成し遂げて健在ぶりを示した武豊騎手も参戦するとあって、いつになく門別競馬場は早い時間帯から多くのファンが集まっていた。

 コロナ禍でもあり、主催者は上限1300人の制限を設定しているが、そもそも門別は入場者の少ない競馬場である。通常開催時はだいたい400〜500人前後で推移する。したがって1300人というのは、かなり多めの設定なのだ。

 1周1600mの地方競馬としては最大級のコースを有するが、門別の観客エリアは、決して広くない。普段の人数にちょうど見合ったサイズになっており、通常ならば、かなりゆったりと観戦できる。

 だが、ひとたびここに1000人超の人々が入ってくると、場内は見た目かなり混雑している印象になる。多くの来場者に対応するべく、この日はキッチンカーも2台場内に乗り入れて客の注文に応えていた。人が多く賑やかな雰囲気は、やはり気持ちも高揚してくる。

 この日は、オグリキャップの血を引く「フォルキャップ」(2歳牡、桧森厩舎)が、第6レースのフレッシュチャレンジ競走(認定)にてデビューするので、それに間に合わせるためいつもより早めに競馬場入りした。フォルキャップはオグリキャップのひ孫になり、父クレイドルサイアー、母コスモフリップという血統で、八嶋長久氏の所有馬。日高町のファーミングヤナキタで生産された。途中まで単勝1番人気に支持される人気ぶりであったが、最終的には2番人気に落ち着き、レース本番を迎えた。

 距離1000m。ファンファーレが鳴り響き、いざゲートが開くと、スタートダッシュがつかず1頭だけ遅れる展開となったが、それでも徐々に追い上げ、4コーナーを回ってからはコース最内を果敢に進み、上位3頭に迫る4着に健闘した。追って伸びる脚を使えるので、次走は勝ち負けが期待できそうだ。なお、このレースを制したのはラブミーモナコ。コパノリッキー産駒で小林祥晃氏の所有馬であった。

 レースが進んで第11レースの「北海道スプリントカップ」に出走する各馬がパドックに姿を現した。いつもはまず見られない光景だが、この日は、鉄柵の前で数多くのファンが「出待ち」をしていた。中央からは武豊騎手の他、柴田善臣、秋山真一郎の両騎手も参戦している。

 出走馬10頭のうち、人気は中央馬4頭に集中しており、これら4頭だけが10倍を切っていた。1番人気はダンシングプリンスとリュウノユキナがそれぞれ2.2倍で分け合い、続いてスマートダンディー6.4倍、昨年のこのレースの覇者ヒロシゲゴールド7.7倍と続く。武豊騎手はヒロシゲゴールドに騎乗である。柴田善臣騎手はリュウノユキナ、秋山真一郎騎手はスマートダンディーだ。ダンシングプリンスは地元ホッカイドウ競馬の落合玄太騎手が起用された。

 レース前から、おそらく中央所属馬同士の争いになるだろう、との予想であった。いざゲートが開いて各馬がスタートすると、やはり案の定、3コーナーにさしかかったあたりで中央勢3頭が前に立つ。地元勢ではアザワクが必死に中央勢に食らいつき、4番手につけていたが、4コーナーを回り直線にむかったところでズルズルと失速してしまった。

 勝負は完全に中央勢4頭の争いとなり、ダンシングプリンスが抜け出して1分10秒6のタイムで優勝。首差の2着がスマートダンディー、1馬身差の3着にリュウノユキナ。武豊騎手騎乗のヒロシゲゴールドは4着であった。

 勝ったダンシングプリンスは父パドトロワ、母リトルブレッシング、母の父バブルガムフェローという血統の牡6歳鹿毛。社台ファーム生産で、馬主は吉田千津氏。宮田敬介厩舎の管理馬。通算成績は13戦9勝2着1回3着1回。前走はサウジアラビアに遠征しリヤドダートスプリントを制しており、これで重賞3連勝である。

 さて、この日は、南関の裏開催が浦和だったことから、ナイターは門別の独占となり、馬券売り上げはひじょうに好調であった。終わってみれば、13億9691万円と、久々に10億円を超えた。昨年の北海道スプリントカップは5月27日に行われ、10億6828万円だったので、それから見ればかなり増えた計算だが、昨年は川崎との重複だったので単純な比較はできない。

 今年のホッカイドウ競馬は、今のところ、どうも古馬の層が薄く、出走頭数の少なさが目につく。6月に入り、2歳戦は徐々にレース数も出走頭数も充実してきたようだが、1日のうち2歳戦が組まれるのはまだ明るい時間帯で、売り上げの見込める午後7時以降の3〜4レースは、決まって出走頭数が少ない。この要因は古馬陣の駒数の少なさに起因する。メインレースが6頭立て、7頭立てということが再々あり、これが馬券的な妙味も少なくしている。

 この原因は、おそらく他の地方競馬も好調なことにあるのだろう。稼げる馬ほど他地区へ移籍すると、そこで賞金を得られるのでなかなか門別には帰ってこない。帰ってきても門別の場合、11月には再びシーズンオフに入る気候上のハンデがあるので、メリットをあまり感じないのかも知れない。

 4月13日に開幕したホッカイドウ競馬は来る11月10日まで全15開催85日間の予定である。昨年、一昨年と2年連続で年間売り上げ500億円を超えた例に倣えば、今年の“ノルマ”は、1日平均6億円、計510億円といったところであろう。残念ながら今のところ、1日6億円を超えた日は少なく、辛うじて浦和開催と重複した日だけ数字が伸びるものの、それ以外の日は4〜5億円あたりで推移している。

 世の中がコロナ禍から徐々に脱して、人々が再び積極的に外に出て活動し始めていることを考えると、そうそういつまでも「巣ごもり需要」を当てにはできなくなってきているように思う。

(文=田中哲実)

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