【長岡一也=コラム「競馬白書」】

◆スピードだけでなくひと伸びする脚が必要

 かつて新潟の直線千米戦を勝ったとき武豊騎手は、取材陣からの短い距離で忙しかったのではという問いかけに、直線が千米もあるのだから十分でしたよと笑わせていたことがあった。

 スタートして真っ直ぐ一直線、どんなイメージでレースにのぞんでいるのか、実況するとき、ふとそんなことに思いが及ぶことがあった。

 ゲートが開くと、双眼鏡で覗くこっちに向っていっせいに駆けてくるので、どれが先頭か、どの馬の脚色がいいのかを見分けるのに、各馬の脚元を見るのが一番と再確認できたのが、この直線千米戦だった。

 アイビスサマーダッシュは、その直線千米のハイライトの重賞だが、過去21回、牝馬が14回も優勝。その中には7連勝が含まれている。夏の牝馬、牝馬の夏を証明しているのだ。

 そして、アイビスサマーダッシュのレコードタイムは53秒7、第2回のカルストンライトオがマークしている。

 第18回の勝ち馬ダイメイプリンセスが53秒8と0秒1差まで迫ったが、未だに破られていない。数ある重賞の中でも特異な存在といえる。

 どれだけ厳しいレースかは、ラップタイムを見るとはっきりする。この直線千米戦は、スピードがあっても、道中もうひと伸びする脚がないと苦しい。最後のひとハロンは、その前のひとハロンより1秒前後はかかっていて、これはどのレースでもそうであり、いかにゴールを目前にして各馬が苦しんでいるかがわかる。

 この最後の場面で踏ん張れないとき、少しでも切れる馬にチャンスがめぐってくるのだ。ほぼ平坦なコースに適している牝馬の成績が目立つのも、こんなところからきているのではないか。

 過去3年続けて出走し、2019年に勝って以後2年連続2着のライオンボスのレースを振り返って、この直線千米戦のゴール前を想像してみたい。

 まず3年前、4歳で別定56キロ、韋駄天Sを勝って2連勝で1番人気。6枠11番から一気に出て外ラチぞいを走り、55秒1、上がり3ハロン33秒0で逃げ切っていた。

 2年前も韋駄天Sを勝ち、7枠13番で一番人気、別定57キロ。5歳牝馬54キロのジョーカナチャンが5枠9番から押して押して外ラチぞいに出て逃げ、直後から迫ったライオンボスはアタマ差及ばず2着。走破タイムは54秒5、上がり3ハロンは勝ち馬を上回る32秒6だった。

 そして昨年、道悪と58キロで初めて韋駄天S9着と大敗した後にのぞんだ。別定57キロ、6枠12番で2番人気。レースは、51キロ、7枠14番で1番人気の3歳牝馬オールアットワンスに残り300米で交わされ、3/4馬身差で惜敗、走破タイム54秒3、上がり3ハロンは32秒4と頑張っていた。

 今年7歳で58キロのライオンボスがどこまでやれるかだが、そろそろ世代が動きそうでもある。

 牝馬では、千直2戦2勝のマリアズハート。今年は54キロで出るオールアットワンス。そしてマウンテンムスメにシンシティに注目。

「ダッシュして サマーを飾る 千米」

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