【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】

◆先週の血統ピックアップ

・9/11セントウルS(GII・中京・芝1200m)
 好位を追走したメイケイエールが直線で楽々と突き抜け、コースレコードで快勝しました。勝ちタイム1分06秒2は、芝1200mの日本歴代3位の好タイム。開幕週で馬場が良かったことも確かですが、前半3ハロンが32秒5と、前が飛ばして速い流れになったことも要因です。

 ソダシやハヤヤッコと同じシラユキヒメの白毛ファミリーに属していますが、この馬は毛色を受け継ぎませんでした。2代母ユキチャンはダートグレード競走を3勝した砂の名牝です。

 父ミッキーアイルは、ディープインパクト産駒の名マイラーで、メイケイエールのほかにナムラクレア(函館スプリントS、小倉2歳S)、デュアリスト(兵庫ジュニアグランプリ)を出しています。

 メイケイエールはデインヒル4×4。このインブリードを持つミッキーアイル産駒は、出走12頭中7頭が勝ち上がるハイアベレージです。ミッキーアイル産駒は芝1200mの重賞で[5-1-1-4]と驚異的な成績を残しています。メイケイエールだけでなくナムラクレアも挑むことになる次走のスプリンターズSは、大いに期待できます。

◆今週の血統Tips

 歴史上、最も偉大な競馬の庇護者であったエリザベス2世が9月8日、96歳で亡くなりました。イギリスのビッグレースのなかで、ついにダービーを勝てなかった事実は有名ですが、チャンスは幾度かありました。1953年6月6日、女王の戴冠式の4日後に行われたダービーに、愛馬オリオールを出走させました。

 しかし、1番人気ピンザに4馬身差をつけられて2着。このとき27歳だった女王は、ダービーはいずれ勝てるだろうと考えていたかもしれません。

 しかし、この年以降、女王がご覧になった70回のダービーのなかで、これが最高着順でした。女王の持ち馬のなかで最強だったのはハイクレア。前出のオリオールと同じ牝系で、1974年の英1000ギニーと仏オークスを制した名牝です。

 繁殖牝馬となった同馬は何頭かの仔を産みますが、その最高傑作は英2歳牝馬チャンピオンとなったハイトオブファッション。この牝馬を、女王は売却してしまいます。

 女王といっても無限にお金を使えるわけではなく、競馬事業の財政を正常化させるために、どうしても売る必要に迫られたからです。売却したハイトオブファッションは、新しいオーナーのもとで、1989年の英ダービー馬ナシュワンを産みます。

 おそらく、女王のダービーにまつわるチャンスのなかで、これが最大のものだったと思います。ハイトオブファッションの売却は痛恨事だったはずですが、強がりなのかどうなのか、その後、まったく悔いていない旨のコメントを出されています。

 ちなみに、ハイクレアの直系子孫から、その後、2頭の世界的名馬が誕生しています。1頭はディープインパクト。もう1頭はバーイード。

 女王はその事実を把握した上で旅立たれました。ご自身が配合を手がけて世に生み出した馬が、世界の競馬史に大きな役割を果たした事実を、誇りに思い、満足されていたのではないでしょうか。

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