【大恵陽子=コラム『ちょっと馬ニアックな世界』】

JRA馬と地方馬が対決するダートグレード競走。その多くでJRA馬が優勝する中、園田・姫路競馬のイグナイターがこの春、黒船賞JpnIII、かきつばた記念JpnIIIと連勝を果たしました。その後は北海道で早めの夏休みをとり、10月10日に盛岡・南部杯JpnIで秋初戦を迎えます。その先に見据えるのは、JBCスプリントJpnI。

また、同じ新子雅司厩舎に移籍してきた道営三冠馬・ラッキードリームは先週の姫山菊花賞を制覇。「ナルシストな三冠馬かもしれない」という意外な一面を持つ同馬は、12月の高額重賞・園田金盃へ向けて勢いに乗ります。

それぞれの秋に向けた「ちょっと馬ニアックな世界」を覗いてみましょう。

◆JBCを見据え、盛岡へ

 深い砂を物ともしない先行力と、小回りコースでの器用な立ち回りでダートグレード競走2連勝を遂げたイグナイター。

 今年3月の黒船賞は「レース史上、最もタフな馬場」と言われる中、逃げ馬の後ろという絶好位を取って勝ち、5月のかきつばた記念は内枠がことごとく飛ぶほど内の砂が深い状況ながら、1番枠から好ダッシュを決めたことで勝利へと繋げました。
 その後はさきたま杯JpnIIへ、というプランもありましたが、「状態がもう一つ上がってこなかったですし、夏に弱かったので休ませました」と新子調教師。

 涼しい北海道で英気を養い、8月末頃に園田競馬場に帰ってきました。

 3〜4カ月休んでいたため、乗り始めた頃は「まだ体に緩さがありました」というのは仕方のないこと。

「乗り込むごとにスイッチが入ってきました」というのはさすが交流重賞2勝馬です。

 秋初戦には東京盃JpnIIか南部杯JpnIの2つのプランがありました。

「主戦の田中学騎手とも相談しましたが、どちらのレースもイグナイターにとっては一長一短という意見になりました。最終的にはオーナーの判断にお任せして、南部杯に行くことになりました」

 南部杯はJpnIとあって、同レース二連覇中のアルクトスや、今年のフェブラリーS覇者のカフェファラオなどかなりの強豪馬が集いますが、11月のJBCに向け、盛岡コースを経験できることは大きなプラス材料。

 地方競馬に移籍後はずっと右回りを使われてきましたが、元々はJRA東京ダート1600mでデビュー勝ちを収めた馬。

 左回りのワンターンは実績があり、「距離も合うと思います」と話します。

 師自らが調教にまたがり、黒船賞では高知のタフな馬場に対応するため溜める追い切りを、かきつばた記念はスピード馬場の名古屋へフィットさせるために時計重視の追い切りを行ってきました。

 今回もきっと南部杯仕様の仕上げとなるでしょうし、その後に見据えるJBCスプリントへと繋がるレースを期待しています。

◆僕は褒めて伸びるタイプ!

 さて、新子厩舎といえばもう一つ話題が。

 短距離で活躍するイグナイターに対し、中距離で楽しみなラッキードリームが今夏、移籍してきました。

 同馬は昨年の道営三冠馬。移籍2戦目となった9月29日の重賞・姫山菊花賞で見事な末脚を見せて勝利しました。

 同レースには園田・姫路競馬で2年連続年度代表馬に輝くジンギや、JRAオープンから移籍してジンギと互角の戦いを繰り広げていたシェダルも出走していたのですが、この勝利で一気に古馬中距離界のトップ候補へと名乗りを上げました。

 とはいえ、ジンギは休養明け、シェダルは「返し馬から馬が走りたくなさそうだった」(吉村智洋騎手)ということですから、12月の大一番・園田金盃では三強対決がまた盛り上がることでしょう。(1着賞金はダートグレード競走にも匹敵する3000万円!)

 そんなラッキードリーム、新子調教師は「ナルシストな三冠馬かも」と表現します。

「ヨシヨシと褒めて撫でると、落ち着くんです。乗り手や担当者が変わるとうるささを見せるくらい、とても繊細な馬だと感じています。

 雨の日の調教の帰り道ではバチャバチャという自分の脚音に驚いてフーフー言うんですけど、そういう時も『ヨシヨシ』と撫でたら落ち着きます。

 こちらが怒ると、逆ギレしそうなタイプなので、まだ一度も怒ったことがありません」

 褒めて伸びるタイプなラッキードリームも今後の活躍も楽しみですね。

(文=大恵陽子)

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