11月13日に阪神競馬場で行われるエリザベス女王杯(3歳上牝・GI・芝2200m)。三冠牝馬デアリングタクト、外国から愛オークス馬マジカルラグーン、JRAの強力3歳勢が4頭出走など注目度の高い一戦となりそうだ。過去46回の開催において数々の女傑が名勝負を繰り広げてきたが、このレースの名前を聞くと思いだす一頭がいる。2019年と2020年に連覇を達成したラッキーライラックだ。

 ラッキーライラックは父オルフェーヴル、母ライラックスアンドレース、母の父Flower Alleyという血統。父はご存じの通り数々の伝説を残したクラシック三冠馬で、母は米G1勝ち馬の良血馬だ。

 栗東の松永幹夫厩舎に所属し、2017年8月に父と同じ新潟競馬場でデビュー。初戦で勝ち上がると、2戦目のアルテミスSで重賞初制覇。12月には2歳女王決定戦・阪神JFでGI初制覇を果たし、同年のJRA賞最優秀2歳牝馬を受賞した。その後、年明け初戦のチューリップ賞も快勝し、無傷の4連勝。この年の牝馬三冠路線はラッキーライラックを中心に回っていくことは疑いようがなかった。あの歴史的名牝が現れるまでは…。

 迎えた牝馬三冠初戦の桜花賞。ラッキーライラックは単勝1.8倍の1番人気に支持された。レースでは前目を追走し、4コーナーを回って逃げ馬をあっさり交わす。誰しもが勝利を信じたその刹那、外から白いシャドーロールが猛然と差し切っていった。稀代の名牝アーモンドアイ伝説の幕開けだった。

 そこから長いトンネルが始まった。牝馬三冠ではアーモンドアイに後塵を拝し、古馬になっても精彩を欠いて勝ちきれない競馬が続く。気づけば連敗は“7”まで膨れ上がっていた。復活を期す陣営は心機一転、短期免許で来日中だったC.スミヨン騎手でエリザベス女王杯に向かうことを決めた。

 迎えたレース本番。好スタートを切ったラッキーライラックだが、いつもとは異なり中団に控える競馬を選択。4コーナーでもまだ中団の最内に位置し、外にも思うように出せない状況の中、それでもスミヨン騎手はインにこだわった。直線で前が開いた瞬間、脚をためていたラッキーライラックは一気に加速。ラヴズオンリーユーやクロノジェネシスを軽々交わし、逃げ粘るクロコスミアを上がり32秒8の豪脚で差し切ってみせた。2歳女王が1年半以上ぶりに美酒を味わった。

 レース後、スミヨン騎手がインタビューで語った言葉がとても印象的だった。「オルフェーヴルの子供という事で、この馬には縁を感じていました。あの時の無念を晴らせた思いもあり、良かったです」。2012年の凱旋門賞にて、あとわずかのところで世界の頂点を逃したことについて触れ、喜びをかみしめた。競馬の血統のロマンが凝縮されたような、そんな一幕だった。

 ラッキーライラックはその後も活躍を続け、2020年の大阪杯を制覇。同年のエリザベス女王杯にも出走し、見事連覇を果たした。この時は、京都競馬場改修の影響で阪神開催、かつ鞍上はC.ルメール騎手。奇しくも2018年の桜花賞でアーモンドアイに負けた舞台とその鞍上で勝利を収めた。通算成績はGI・4勝を含む19戦7勝。総獲得賞金は7億を超えた。

 現在、ラッキーライラックはノーザンファームで繁殖馬としての生活を送っている。今年2月には早くも初仔となる父レイデオロとの牝馬を出産した。早ければ、2024年には競馬場でお目見えとなる。GI・4勝、そしてエリザベス女王杯連覇の名牝は、次なるステージへと進んでいる。